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小川洋子さんの新刊本


■ 最果てアーケード    講談社    (2012年6月)
■ みんなの図書室    PHP研究所 (2011年12月)
■ 小川洋子の「言葉の標本」   文芸春秋  (20011年9月)
■ 人質の朗読会    中央公論新社 (2011年2月)
■ 妄想気分    集英社 (2011年1月)
■ 小川洋子対話集 文庫版 幻冬舎(2010年8月)

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著者       : 小川洋子
出版社    : 文芸春秋社 
サイズ     : 文庫
ページ数  : 202p
発行年    : 1994年
価格        : 440円
 【わたしの感想文】

ぎょっとする小説である。男である私には想像できない世界。この小説に出てくる妊娠した姉の夫、ただただ、おろおろするばかりで、
何も役に立たず、無頓着で世俗的なことしかやらないし、想像力はゼロ。私と非常に似ている。
一方、妊娠した姉の妹(主人公)の心の奥と見えない世界。この対比が鮮やかに描き出されている。

妊娠というオメデタ、つわりに絶えながら、徐々に母性に目覚める成長を遂げ、輝かしい生命の誕生を迎えるという単純な常識をひっくり返す。しかしこの主人公は、日常のこまごまとしたことを淡々とこなす。姉のわがままな言動や、好き勝手な料理の要求に対して、反抗することなく、従順に、丁寧にこなす。そのような普通に見える彼女だからこそ、目には見えない、想像力が働くのかも知れない。
 
この小説で焦点となっているのが、「農薬入りのアメリカ産グレープフルーツ」と「破壊される染色体」であろう。つわりが終わると突如、食欲を増した姉に対して、農薬が入っていると知りながら、このグレープフルーツのジャムを毎日のように食べさせる。姉と生まれてくるであろう赤ん坊に殺意があるわけではない分、余計に不気味さを感じさせてしまう。この農薬が胎児の染色体を破壊するかも知れないとは主人公は知識として知っている。

もちろん、この農薬が致命的な影響があるとは、常識的にはありえないでしょうが、主人公のこの行いは読者には衝撃的である。
小川作品の中では、一番不気味さを感じるが、見えない世界を描く小川作品としてみれば、全く普通人である主人公を通して、目には見えない時代の流れを静かに感じとっているのかも知れない。毒や悪がないと小説ではないと言う評論家がいますが、毒や悪を正面から描くのでなく、それとは分からないように、静かに語っている。この「妊娠カレンダー」は恐らく、賛否両論を巻き起こす珍しく挑戦的な作品と思いました。
【内容情報】(「BOOK」データベースより)


 出産を控えた姉に毒薬の染まったジャムを食べさせる妹…。妊娠をきっかけとした心理と生理のゆらぎを描く芥川賞受賞作「妊娠カレンダー」。謎に包まれた寂しい学生寮の物語「ジミトリイ」、小学校の給食室に魅せられた男の告白「夕暮れの給食室と雨のプール」。透きとおった悪夢のようにあざやかな三篇の小説。

【目次】(「BOOK」データベースより)

妊娠カレンダー/ドミトリィ/夕暮れの給食室と雨のプール

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プロフィール
HN:
つぶやき博士
性別:
男性
自己紹介:
何気なく本屋で手に取った本が「博士の愛した式」。以来小川作品の虜になる。小川ファンの9割は女性と思いますが、私はオトコ、しかも70才近くのおじいさんです。
みんなに嫌われる数学はわりと好きな理工系ですが、小説であれ、数学であれ、美しいモノには惹かれる今日この頃です。
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