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小川洋子さんの新刊本


■ 最果てアーケード    講談社    (2012年6月)
■ みんなの図書室    PHP研究所 (2011年12月)
■ 小川洋子の「言葉の標本」   文芸春秋  (20011年9月)
■ 人質の朗読会    中央公論新社 (2011年2月)
■ 妄想気分    集英社 (2011年1月)
■ 小川洋子対話集 文庫版 幻冬舎(2010年8月)

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 妖精が舞い下りる

著者: 小川洋子
出版社: 角川書店 
サイズ: 文庫
ページ数: 246p
発行年: 1997年
価格: 540円
わたしの感想文】
美しいタイトルで最初は小説かと思っていましたが、エッセイでした。エッセイにもこのような小説かと思わせるようなタイトルがついています。エッセイとしては、後に出版された「深き心の底より」「犬のしっぽを撫でながら」があります。

このエッセイは小川洋子さんの最初のエッセイで、出版されたの
が1993年ですから、「妊娠カレンダー」出版の2年後となり
ます。このエッセイはわたしにとって、作家小川洋子を深く知りた
いとの願いをかなり叶えてくれました。
というのも小川洋子という作家がなぜ、あのような不思議な、そして透明な小説を書くのかずーと謎のままでした。作品そのものを読んでただ、その世界に浸っていれば良いのですが、作者本人が直接思いを語っているのを読むとより、一層理解が深まる気がします。

このエッセイでは、作家としての原点、自分の小説スタイル、影響を受けた作家(例えば、金井美恵子、村上春樹、川端康成など)、プライべートな話、そしてファンである、阪神タイガース、佐野元春のことが楽しく描かれている。気軽なところでは、わたしもファンであるので、「私の阪神タイガースカレンダー」の章が実に微笑ましく楽しく読ませていただきました。

さて、小川作品の底に流れる核心のことですが、次の二つの文章に集約されているような気がして、少し納得しました。
現実の細かい描写を通して、目には見えない世界を描き出す。
そして読者を現実の束縛から自由に解放し、現実の自分を見失うようなやや攻撃的な作品としたいという願いに思えます。

「作中人物が、自分の着ている喪服に思いを巡らせている。特別な関係にある男性の指を見つめている。その時、彼らの目に映るも服や指がどんな姿をしているのか、私はどうしてもこだわってします。彼らが物体の輪郭でなく、内面を見ようとしている時、その目に見えないはずの内面を何とか言葉にしようとする。つまり、私は見えないものを言葉で見ようとしているのだ。作家とは本当に、厄介な職業と思う。」

わたしは自分の小説の中で、読者が現実の枠に縛られた価値観や感情や論理から解き放たれ、不可思議で自由な世界を漂ってくれたらと思う。読み終わった時、読者がうまく現実に戻ってこれなくて立往生してしまうような小説、自分のいる場所があいまいに揺らいでしまうような小説を書きたいと思う。」
 【内容情報】(「BOOK」データベースより)

人が生まれながらに持つ純粋な哀しみ、生きることそのものの哀しみを心の奥から引き出すことが小説の役割りではないだろうか。書きたいと強く願った少女が成長しやがて母になり、芥川賞を受賞した日々を卒直にひたむきに綴り、作家の原点を明らかにしていく、珠玉の一冊。繊細な強さと静かなる情熱を合わせ持つ著者の、人と作品の全貌がみえてくる唯一のエッセイ集。

【目次】(「BOOK」データベースより)

私の文章修業/輪郭と空洞/小説の内側と外側/終わりのない小説/小説の向こう側/「冷めない紅茶」とあいまいさと編集者/作品を通して人とつきあう/小説を書きたくなる瞬間/「愛の生活」とわたしの関係/危うい気持ち悪さ〔ほか

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プロフィール
HN:
つぶやき博士
性別:
男性
自己紹介:
何気なく本屋で手に取った本が「博士の愛した式」。以来小川作品の虜になる。小川ファンの9割は女性と思いますが、私はオトコ、しかも70才近くのおじいさんです。
みんなに嫌われる数学はわりと好きな理工系ですが、小説であれ、数学であれ、美しいモノには惹かれる今日この頃です。
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