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小川洋子さんの新刊本


■ 最果てアーケード    講談社    (2012年6月)
■ みんなの図書室    PHP研究所 (2011年12月)
■ 小川洋子の「言葉の標本」   文芸春秋  (20011年9月)
■ 人質の朗読会    中央公論新社 (2011年2月)
■ 妄想気分    集英社 (2011年1月)
■ 小川洋子対話集 文庫版 幻冬舎(2010年8月)

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195d773d.jpg  ■ 小川洋子さんの略歴
1962年、岡山市生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。1988年『揚羽蝶が壊れる時』で海燕新人文学賞、1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞、2004年博士の愛した数式で読売文学賞、本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、2006年ミーナの行進で谷崎潤一郎賞を受賞。他の著書に『冷めない紅茶』『密やかな結晶』『薬指の標本』『アンネ・フランクの記憶』『沈黙博物館』『偶然の祝福』『まぶた』『』『博士の本棚』『夜明けの縁をさ迷う人々』『科学の扉をノックする』などがある。
  出典: 新潮社  小川洋子・全作品リストは → こちら

■ 小川洋子さんの素顔
  • 私生活では、比較的地味と思われている普通の主婦であり、出不精とか普通の女性感覚でありながら、なぜあのような魅惑の世界を描くことができるのかこれまた、不思議ではある。
    日常と非日常の境目のない独特の世界を繊細なタッチで描く小説とはかなり、かけ離れたそのギャップが興味津々とも言える。
  •  音楽、ジャズシンガー佐野元春の熱烈なファンとして知られ、追っかけもやるそうですが、その熱心さは 佐野元春の歌詞を小説にまでしてしまった。「アンジェリーナ」がそれである。1曲の音楽、1枚の絵画、ある風景 、あるいは何気ない誰かのしぐさの中に浮かぶ自由奔放なイメージを言葉として表現する、そこには束縛を全く感じさせない。
  • 筋金入りの阪神タイガースファンである。かく言う私も永年の阪神タイガースファンなので、全く共感できます。勝っても、負けても 変わらないのが阪神タイガースファンで、これはもう病気か気違いの部類に入る。朝起きてから、ナイターが終わるまで、毎日の1コマに必ず阪神タイガースのコトが頭をよぎる日々を過ごしてしまうのです。あの「博士の愛した数式」で弱い時の阪神タイガースや伝説の大投手江夏豊が登場するのは小川洋子さんにとって至福の瞬間だったに違いない。
  • エフエム東京(TOKYO FM)のラジオパーソナリティをやっていて、毎週日曜日10時~10時30分ブックレビューを聴くことができます。 後世にぜひ残しておきたい作品が選ばれており、小川洋子さんの視点から分かりやすくて突っ込んだ書評が聴けるのが小川ファンの愉しみです。
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 タ イ ト ル  出 版 年 出 版 社 
完璧な病室 1989年 福武書店
冷めない紅茶 1990年 福武書店
妊娠カレンダー 1991年  文藝春秋 
余白の愛 1991年 福武書店
シュガータイム 1993年 中央公論社
アンジェリーナ 1993年 角川書店
妖精が舞い下りる夜 1993年 角川書店
密やかな結晶 1994年  講談社
薬指の標本 1994年 新潮社
刺繍する少女 1996年 角川書店
やさしい訴え 1996年 角川書店
ホテル・アイリス 1996年 学習研究社
寡黙な死骸 みだらな弔い 1998年 実業之日本社
凍りついた香り 1998年  幻冬舎
アンネ・フランクの記憶 1998年 角川書店
沈黙博物館 2000年 筑摩書房
偶然の祝福 2000年 角川書店
まぶた 2001年 新潮社
貴婦人Aの蘇生 2002年 朝日新聞社
博士の愛した数式 2003年 新潮社
ブラフマンの埋葬 2004年 講談社
惜別 句集 2004年 文学の森
世にも美しい数学入門 2005年 筑摩書房
ミーナの行進 2006年 中央公論新社
深き心の底より 2006年 PHP研究所
おとぎ話の忘れ物 2006年 集英社
犬のしっぽを撫でながら 2006年 集英社
2006年 新潮社
博士がくれた贈り物 2006年 東京図書
はじめての文学 小川洋子 2007年  文藝春秋
小川洋子対話集 2007年 幻冬舎
物語の役割 2007年 筑摩書房
夜明けの縁をさ迷う人々 2007年 角川書店
博士の本棚 2007年 新潮社
科学の扉をノックする 2008年 集英社
生きるとは、自分の物語をつくること 2008年 新潮社
猫を抱いて象と泳ぐ 2009年 文藝春秋
心と響き合う読書案内 2009年 PHP研究所
小川洋子の偏愛短篇箱 2009年 河出書房
カラーひよことコーヒー豆 2009年 小学館
原稿零枚日記  2010年 集英社 
妄想気分 2011年 集英社
人質の朗読会 2011年 中央公論新社
みんなの図書室 2011年 PHP研究所

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みんなの図書室
  作家小川洋子さんは1988年のデビュー以来、コンスタントに優れた作品を世に送り出
  してきた。いわゆる人気作家とは違うが、一旦小川さんの本を読み出すと小川中毒
  になる人が多い。わたし自身もその一人になってしまった。
  大河小説みたいなドラスチックなストーリ展開は決して起こらない。静かに、静かに、奥
  深く核心に迫る。そしてその影に巧妙な毒も盛り込まれていることが多い。
  
  名のある文学賞も多数受賞しているのは、大衆向きというより、プロに評価される側
  面が強いためであろう。

      
年 度 対 象 作 品    出 版 社
海燕新人賞 1988年 揚羽蝶が壊れる時       福武書店
芥川賞 1990年 妊娠カレンダー  文芸春秋
読売文学賞 2004年 博士の愛した数式  新潮社
本屋大賞 2004年 博士の愛した数式  新潮社
泉鏡花文学賞 2004年 ブラフマンの埋葬  講談社
谷崎潤一郎賞 2006年 ミーナの行進  中央公論新社

  本屋大賞は全国の書店員がいちばん売りたい本を、投票によって選ぶ賞として創設
  されました。従来の文学賞と違って、読者に最も近い本屋さんの店員による投票結
  果で決まる賞で、まったく新しいスタイルの賞ですから、読者が本当に面白く読める
  本と言えるでしょう。第1回の受賞作が小川洋子さんの「博士の愛した数式」。

  以下、今年5回目を迎える本屋大賞は知名度も上がり、受賞作はロングセラー作品
  が多い。


年 度 著 者 大 賞 作 品 出版社
第1回         2004年 小川 洋子 博士の愛した数式 新潮社
第2回 2005年 恩田 陸 夜のピクニック 新潮社
第3回 2006年 リリー・フランキー 東京タワー オカンとボクと、時々オトン 扶桑社
第4回 2007年 佐藤 多佳子 一瞬の風になれ 講談社
 第5回  2008年  伊坂 幸太郎 ゴールデンスランバー  新潮社
第6回 2009年 湊 かなえ 告白 双葉社
第7回 2010年 冲方 丁  天地明察  角川書店
第8回 2011年 東川 篤哉 謎解きはデイナーのあとで 小学館
     
小 川 洋 子 の 小 説 作 法
「美しさ」が基調 数多くの小川洋子作品の底に流れているベースは明らか
に「美しさ」である。美しい小説である。
悪意、毒が盛り込まれている小説でも、美しく、透明感
がある。小説によくあるドロドロとした生臭さは全く出てこな
い。「偶然の祝福」の短編「キリコさんの失敗」や「博士の愛
した数式
」はメルヘンとは一味違う心地よい美しさが読者に
伝わってくる。全体に流れる美しさと心地よさが小川洋子の
魅力である。
美しさへの追求は小川洋子さんにとって数学や科学への
興味とつながっている。数学がもともと美しさが基調である
ので必然だったに違いありません。
隠された毒、不気味さ  例えば、妊婦した姉に対する生理的な嫌悪を感じる妹
を描いた「妊娠カレンダー」。農薬に汚染されている可能性
のあるアメリカ産のグレープフルーツジャムを、危ないかも
しれないと思いながらも姉に食べさせ続ける。この不気味
さ、怖さがたっぷり盛り込まれている。女性の中に潜む母
性に対しての違和感を不気味に描く。
このような隠された悪意、不気味さ、毒が多くの小川作品
に出てくるのがもう一つのの特徴でもある。これを好みと
するか、不快とするかは読者次第である。
モーツアルトのように 多くの作家は執筆前にテーマを決めて取材、文献調査
を重ねてストーリーを練り上げ、ストーリを組み立て最後
の結末を用意して執筆にとりかかる。しかし、小川洋子
さんはこのようなスタイルをとらない。「アンネ・フランクの
記憶
」、「博士の愛した数式」では確かに事前の取材を
行っているが、これは数少ない例外である。
ある風景、場面を経験したことをイメージに浮かん時、
それを素直に言葉に置き換えいく。ストーリーも結末も
イメージに浮かんだままに展開していく。
しかし、イメージをそのまま文字にしたら、独りよがりと
なり、素人の作品となってしまう。小川洋子さんはやや
冷静に観察し、文字化する際にまた、文字が新たな
展開を生んでいく。
なので、最後の結末も書き終わった時に初めてわかる
スタイルとなっている。小川さん自身は最初の構想通り
の小説になった小説はつまらない失敗作と言い切って
いる。このような創作スタイルはいわばモーツアルト風
である。モーツアルトは天才と呼ばれ、努力して苦闘し
て作曲したのでなく、神から聞こえる天の声を音符にして
、音符から派生するイメージを膨らまして作曲したと言わ
れている。小川さんの執筆スタイルもこれに通じている
ように思える。
決して突出しない
演出
小川さんの作品には、長編小説や推理小説に出てくる
大きな大げさなクライマックスとか、ヤマ場、ドラマチックな
結末は決して出てこない。
ラブシーンの場面ではたいてい2行以内で終わってしまう。
このため、大ベストセラー作家にはなりえず、どちらかと
言えばマニアックな読者に受けが良く、しかし、一旦ファン
になったら、中毒となってしまう不思議な作家と言える。
突出しないのは、ストーリだけでなく、登場人物、風景、
道具すべての点であるモノが際立って目立ったり、強烈
な印象を持つことはなく、抑制を効かしてある。。この点、
通常の小説では逆に強烈な印象を持つように、主人公を
際立たせようよう執筆するのと対極にある。
わたしの経験では、このようにドラマチックな展開でない
ため、読んだ小説の中身を忘れてしまうことがしばしばで、
しかし、2度読んでも読んでいるその瞬間はすっかり惹か
れてしまう不思議な感覚を味わっている。
とんでもない卓抜な
題材 
凡人には想像さえできない題材〈ネタ)を提示してくれる
のも小川洋子さんの魅力の一つである。「薬指の標本」、
誰も薬指を標本にするなんて思いつきもしなし、挙句の
果て楽譜の音まで標本にする始末である。この文庫本
に出てくる「六角形の小部屋」の短編では、六角形真鍮
製の小部屋の中ででただ一人語るだけの部屋が舞台で
ある。このような珍奇な商売があるとは思えないが、なぜ
か引きずりこまれてしまう不思議さがある。
主人公の名前が
つけられていない小説
普通の小説では名前が付けられた主人公が登場する。
山崎豊子「白い巨塔」では財前五郎、東野圭吾「容疑者x
の献身
」では湯川学。小説のタイトルにも主人公の名前が
使われるくらいである。夏目漱石の「三四郎 」など。
ところが、小川洋子さんの小説に出てくる主人公は一部の
例外「ミーナの行進」などを除き、ほとんど小川作品には
固有名詞の名前はつけられていない。「薬指の標本
では指を負傷した若い女性、妊娠カレンダーでは姉妹
、「博士の愛した数式」では家政婦という風に表現され、
「私」、「わたし」の一人称で統一されていて、名前はつけ
られていない。しかし、傍をかためる人物、恋人、友達、
同僚、家族にはすべて名前がつけられている。
薬指の標本」では標本技術師は弟子丸と言ったように
名前がつけられている。
なぜ、主人公に名前をつけないか?ずっと疑問だった。
どの作品にも名前がないので、明らかに意図的である。
主人公だけを突出させないという小川流に理解はでき
ますが、いまだに良くわかりません。
小川洋子さん、機会があったら、この疑問に答えて下
さい。お願いします。
境界線がない  小川さんの小説でしばしば出てくるのは、生と死、現実
と幻想、流れ、風景などに境界線がなく連続したものと捕
らえているふしがある。
例えば、「冷めない紅茶」ではあの世とこの世に境界線が
なく、登場人物は何食わぬ顔で行ったり来たりしている。
貴婦人Aの蘇生」では動物の剥製が主題になっている
が、剥製は死んでるようで、死んでいない不思議な雰囲
気を醸しだしている。確かに、生と死ははっきり分かれて
いるのでなく、連続したものに違いない。
場面や風景の移り変わりでも、忽然と現れることはなく、
静かにパノラマのようにほとんど連続して流れて行く。
安定した執筆ペース 作家にとって1日平均何枚のペースで書くかは結構重要
なことと言われている。超ベストセラー作家やシリーズ
ベストセラー作家などは信じられないペースで執筆するし、
逆に数年に一度出版の作家はゆっくり過ぎる位のペース
で書いていく。
執筆時間は午前中からはじめて夕方五時ぐらいまでと
決めているそうで、また、一つの作品を書いている時は
それに集中して、他の作品のことは考えないという。
器用な作家でないと自ら語っている。
小川洋子さんは多作作家でもなく、少作作家でもない。
小川洋子作品リストにあるように1989年の初出版
から2008年まで1年で約2作品の出版となっている。文
庫本化を含めればその倍近くになるが。自身の言によ
れば、1日平均4~5枚のペースで、休むことなく書き続
けているという。慌てず、騒がず、欲張らず安定したペース
の執筆態度が静かで美しく、透明感のある作品が生まれ
てくるモトになっていると思われる。

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私 が 読 ん だ 小 川 洋 子さん の 本
  ■ 私の読んだ小川洋子さんの本
       〇 博士の愛した数式
          ・ 映画「博士の愛した数式」
          ・ 小川洋子「博士の愛した数式」の撮影現場に行く
          ・ 映画「博士の愛した数式」試写会の模様
          ・ 映画「博士の愛した数式」をyou tube で観る
          ・ 完全数とは
       〇 世にも美しい数学入門
       〇 博士がくれた贈り物
       〇 ミーナの行進
       〇 薬指の標本
          ・ 映画「薬指の標本」
       〇 
       〇 凍りついた香り
       〇 貴婦人Aの蘇生
       〇 偶然の祝福
       〇  物語の役割
       〇 シュガータイム
       〇 アンジェリーナ
       〇 妖精が舞い下る夜
       〇 犬のしっぽを撫でながら
       〇 ホテル・アイリス
       〇 ブラフマンの埋葬
       〇 犬のしっぽを撫でながら
       〇 沈黙博物館
       〇 妊娠カレンダー
       〇 生きるとは自分の物語をつくること
       〇 完璧な病室
       〇 科学の扉をノックする
       〇 寡黙な死骸 みだらな弔い
       〇 やさしい訴え
       〇 まぶた
       〇 刺繍する少女
       〇 深き心の底より
       〇 小川洋子対話集
       〇 心と響き合う読書案内
       〇 密やかな結晶
       〇 おとぎ話の忘れ物
       〇 冷めない紅茶
       〇 アンネ・フランクの記憶
       〇 博士の本棚
       〇 夜明けの縁をさ迷う人々
       〇 猫を抱いて象と泳ぐ
       〇 カラーひよことコーヒー豆 
       〇 妄想気分
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プロフィール
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つぶやき博士
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自己紹介:
何気なく本屋で手に取った本が「博士の愛した式」。以来小川作品の虜になる。小川ファンの9割は女性と思いますが、私はオトコ、しかも70才近くのおじいさんです。
みんなに嫌われる数学はわりと好きな理工系ですが、小説であれ、数学であれ、美しいモノには惹かれる今日この頃です。
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