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小川洋子さんの新刊本
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■ 福田和也著「作家の値打ち」
評論家福田和也さんが、特に作家に衝撃を与え、物議を醸したと言われる本「作家の
値打ち」を読みました。ここには、エンターテイメントと純文学に分けて選んだ現役作家
(2000年時点)100人の作品をなんと、点数表示で作品を評価するという前代未聞
のことをやってしまっています。その点数の基準というのは
※ 引用は福田和也著「作家の値打ち」です。
■ 小川洋子評
周到な作家である。企みが深い、と云い直してもよい。 一筋縄ではいかない厄介な
思念を透明感あふれるイメージの中で結実してみせる手腕は比類がない。
きわめて邪悪なものを誰もが魅惑されざるをえないような結晶体として見せてしまう、
あるいは邪まな行為を誰もが加担せざるをえない行為として提示する感覚はまさしく
独特のものと云わねばなるまい。「アンネの日記」の影響が云々されるが、誤解して
ならないのは、作者の感覚は、主題はどうであれ、迫害される側でなく迫害する側に
あるということだろう。もしくは、迫害する者よりもより邪悪な者として迫害される者が
立っているということだろう。
・ 「冷めない紅茶」 73点
読み手を、しかもそれが手練れであればあるほど困惑させる小説である。死者
との交流という題材が、かくもそっけなく日常の退屈と地続きで扱われていいの
だろうか、と自問させられる。その自問自体に仕掛けをめぐらしている。
・ 「妊娠カレンダー」 68点
近親者の妊娠という題材によって、作者の悪意は掴み易いものになっているが、
その心理的径庭は、通俗的合理性とは無縁な独自の論理を維持している。
・ 「密やかな結晶」 60点
記憶が狩られる社会という、いわばSF的な設定をあたかも日常の一現象のように
記しながら、「喪失」という近代文学の本質にかかわる問題に切り込んで見せた
野心作。
・ 「やさしい訴え」 76点
チェンバロ製作者をめぐる三角関係とい題材のうちに、作家としてのエレガントさ、
あるいは繊細さと、その裏側にある邪悪な暴力性を、最高度に見事に一致させて
いる。
・ 「寡黙な死骸 みだらな弔い」 56点
きわめて邪まな結構をもった小品からなる短編集。それぞれ作者らしい設定で
読ませるが、いささか水増しされた印象は拭い難い。
■ 福田和也評の感想
小川さん自身も多分この評価を読んでおられたと思いますが、どんな感慨か伺い
知ることはできません。もちろん、福田評にモノ申したいことはヤマほどあっても、
あるいは的をえているかな?思われたしても、小川さんは内に秘め、広言される
ことは決してないでしょう。
わたしみたいな小川中毒者にとっては、評価点に大いなる不満が残るのは当然
ですが、というか、福田さんがどんな評価をしようが、あまり、関係ないのです。
意外だったのは”周到な作家である。企みが深い、と云い直してもよい。”という評
でした。とり挙げられた作品が小川さんの初期の作品ばかりだったのが影響して
いると思ってしまいました。最近の作品についていえば、、用意周到、企みが深い
とは、わたしは全く感じません。もちろん、無垢ではないけれど、計算されない
自然さと静謐感で物語が語られている印象です。
初期の作品では、人間がもつ邪悪なモノ、正常なモノの境界線のなさを物語る
作品が確かにあると感じますが、これが、用意周到、企みが深い視点からの
描写でしょうか?本当のところ、小川さん自身が読者には決して言わない用意
周到さを秘めているかも知れませんが、批評家として専門性からそう読めるのか、
わたしみたいな素人には、単なる深読み過ぎでは?と思う位です。
評論家福田和也さんが、特に作家に衝撃を与え、物議を醸したと言われる本「作家の
値打ち」を読みました。ここには、エンターテイメントと純文学に分けて選んだ現役作家
(2000年時点)100人の作品をなんと、点数表示で作品を評価するという前代未聞
のことをやってしまっています。その点数の基準というのは
※ 引用は福田和也著「作家の値打ち」です。
点 数 | 評 価 |
90点以上 | 世界文学の水準で読みうる作品 |
80点以上 | 近代日本文学の歴史に銘記されるべき作品 |
70点以上 | 現在の文学として優れた作品 |
60点以上 | 再読に値する作品 |
50点以上 | 読む価値がある作品 |
40点以上 | 何とか小説になっている作品 |
39点以下 | 人に読ませる作品になっていない作品。 |
29点以下 | 人前で読むと恥ずかしい作品。もしも読んでいたら、秘密にした方が良い |
ちなみに最高得点は96点村上春樹著「ねじまき鳥クロニクル」、96点石原慎太郎著
「わが人生の時の時」となっていました。
そこで気になるのがわが小川洋子さん、どんな評価になっているのか、ここに
この本から小川洋子さんの部分を全文引用します。
引用元は 福田和也著「作家の値打ち 」 飛鳥新社 2000年4月発行です。「わが人生の時の時」となっていました。
そこで気になるのがわが小川洋子さん、どんな評価になっているのか、ここに
この本から小川洋子さんの部分を全文引用します。
■ 小川洋子評
周到な作家である。企みが深い、と云い直してもよい。 一筋縄ではいかない厄介な
思念を透明感あふれるイメージの中で結実してみせる手腕は比類がない。
きわめて邪悪なものを誰もが魅惑されざるをえないような結晶体として見せてしまう、
あるいは邪まな行為を誰もが加担せざるをえない行為として提示する感覚はまさしく
独特のものと云わねばなるまい。「アンネの日記」の影響が云々されるが、誤解して
ならないのは、作者の感覚は、主題はどうであれ、迫害される側でなく迫害する側に
あるということだろう。もしくは、迫害する者よりもより邪悪な者として迫害される者が
立っているということだろう。
・ 「冷めない紅茶」 73点
読み手を、しかもそれが手練れであればあるほど困惑させる小説である。死者
との交流という題材が、かくもそっけなく日常の退屈と地続きで扱われていいの
だろうか、と自問させられる。その自問自体に仕掛けをめぐらしている。
・ 「妊娠カレンダー」 68点
近親者の妊娠という題材によって、作者の悪意は掴み易いものになっているが、
その心理的径庭は、通俗的合理性とは無縁な独自の論理を維持している。
・ 「密やかな結晶」 60点
記憶が狩られる社会という、いわばSF的な設定をあたかも日常の一現象のように
記しながら、「喪失」という近代文学の本質にかかわる問題に切り込んで見せた
野心作。
・ 「やさしい訴え」 76点
チェンバロ製作者をめぐる三角関係とい題材のうちに、作家としてのエレガントさ、
あるいは繊細さと、その裏側にある邪悪な暴力性を、最高度に見事に一致させて
いる。
・ 「寡黙な死骸 みだらな弔い」 56点
きわめて邪まな結構をもった小品からなる短編集。それぞれ作者らしい設定で
読ませるが、いささか水増しされた印象は拭い難い。
■ 福田和也評の感想
小川さん自身も多分この評価を読んでおられたと思いますが、どんな感慨か伺い
知ることはできません。もちろん、福田評にモノ申したいことはヤマほどあっても、
あるいは的をえているかな?思われたしても、小川さんは内に秘め、広言される
ことは決してないでしょう。
わたしみたいな小川中毒者にとっては、評価点に大いなる不満が残るのは当然
ですが、というか、福田さんがどんな評価をしようが、あまり、関係ないのです。
意外だったのは”周到な作家である。企みが深い、と云い直してもよい。”という評
でした。とり挙げられた作品が小川さんの初期の作品ばかりだったのが影響して
いると思ってしまいました。最近の作品についていえば、、用意周到、企みが深い
とは、わたしは全く感じません。もちろん、無垢ではないけれど、計算されない
自然さと静謐感で物語が語られている印象です。
初期の作品では、人間がもつ邪悪なモノ、正常なモノの境界線のなさを物語る
作品が確かにあると感じますが、これが、用意周到、企みが深い視点からの
描写でしょうか?本当のところ、小川さん自身が読者には決して言わない用意
周到さを秘めているかも知れませんが、批評家として専門性からそう読めるのか、
わたしみたいな素人には、単なる深読み過ぎでは?と思う位です。
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プロフィール
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つぶやき博士
性別:
男性
自己紹介:
何気なく本屋で手に取った本が「博士の愛した式」。以来小川作品の虜になる。小川ファンの9割は女性と思いますが、私はオトコ、しかも70才近くのおじいさんです。
みんなに嫌われる数学はわりと好きな理工系ですが、小説であれ、数学であれ、美しいモノには惹かれる今日この頃です。
みんなに嫌われる数学はわりと好きな理工系ですが、小説であれ、数学であれ、美しいモノには惹かれる今日この頃です。
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