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小川洋子さんの新刊本


■ 最果てアーケード    講談社    (2012年6月)
■ みんなの図書室    PHP研究所 (2011年12月)
■ 小川洋子の「言葉の標本」   文芸春秋  (20011年9月)
■ 人質の朗読会    中央公論新社 (2011年2月)
■ 妄想気分    集英社 (2011年1月)
■ 小川洋子対話集 文庫版 幻冬舎(2010年8月)

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 物語の役割

著者       : 小川洋子
出版社    : 筑摩書房 
サイズ     : 新書
ページ数  : 126p
発行年    : 2007年
価格        : 714円

 
わたしの感想文】

この「物語の役割」は、三鷹芸術文化センター、京都
造形芸術大学、芦屋市ルナ・ホールで講演した内容
をまとめたものです。
このような作家の考え方、小説作法を直接読んで知る
というのは、良いのか悪いのか賛否両論があると思い
ますが、私の場合、作者の背景を知るのも悪くないと
思っていますので、この類の本をついつい読んでしまい
ます。

小川洋子作品を読んでいて、最近の小説は初期の作品
から、少しずつ変わってきているのでは?(進化?)と
感じていました。
いつか、「なぜ小説家をかくのですか?」の不躾な誰かの
質問に「とにかく書きたいのです」答えていらっしゃるの
覚えています。
ここでは、露骨ではないが、自我と目には見えない自我
に向き合っていたと感じることがありました。例えば「
娠カレンダー
」、心の奥底に潜む微妙な悪意とかを感じま
す。しかし、「博士の愛した数式」あたりから、その自我が
すっかり消え、何か宇宙的な神秘の匂いがします。

物語は作家が創作するものではない。「誰でも日常の中に
物語はすでに現実の中に隠れている。作家は言葉に
されないために気づかれないでいる物語を見つけ出し、
鉱石を掘り起こすようにスコップで一生懸命掘り出して、
それに言葉を与えるのです。自分が考えついたのではな
く、実はそこにあったのだ、というような謙虚な気持ちに
なったとき、本物の小説が書けるのではないかという気が
しています。」とこの本で語っています。
これは、数学者が、数式や定理は人間が作り出したり、
発明するのではなく、発見と言っているのと同じです。

著者小川洋子愛読書の一つレイモンド・カーヴァーの
エッセイ「書くことについて」から、次の文章を引用してい
ます。小川洋子さんの最近の作家スタイルを端的に表して
いると思います。
『作家にはトリックも仕掛けも必要ではない。それどころか、
作家になるには、とびっきり頭の切れる人間である必要も
ないのだ。たとえそれが阿呆のように見えるとしても、作家
というものはときにぼうっと立ちすくんで何かにーそれは
夕日かもしれないし、あるいは古靴かもしれないー見とれ
ることができるようでなくてはならないのだ。頭を空っぽに
して、純粋な驚きに打たれて』 
作家と普通人との違いは、日常の些細な出来事や風景
の中に隠されている何かに気づくかどうか、そしてそれを
言葉にできるかどうかなのであろう。
 内容情報】(「BOOK」データベースより)

私たちは日々受け入れられない現実を、自分の心の形に
合うように転換している。誰もが作り出し、必要としている
物語を、言葉で表現していくことの喜びを伝える。

【目次】(「BOOK」データベースより)

第1部 物語の役割(藤原正彦先生との出会い/『博士の
愛した数式』が生まれるまで/誰もが物語を作り出してい
る ほか)/第2部 物語が生まれる現場(私が学生だった
ころ/言葉は常に遅れてやってくる/テーマは最初から
存在していない ほか)/第3部 物語と私(最初の読書
の感触/物語が自分を救ってくれた/『ファーブル昆虫記』
―世界を形作る大きな流れを知る ほか)

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プロフィール
HN:
つぶやき博士
性別:
男性
自己紹介:
何気なく本屋で手に取った本が「博士の愛した式」。以来小川作品の虜になる。小川ファンの9割は女性と思いますが、私はオトコ、しかも70才近くのおじいさんです。
みんなに嫌われる数学はわりと好きな理工系ですが、小説であれ、数学であれ、美しいモノには惹かれる今日この頃です。
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