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小川洋子さんの新刊本


■ 最果てアーケード    講談社    (2012年6月)
■ みんなの図書室    PHP研究所 (2011年12月)
■ 小川洋子の「言葉の標本」   文芸春秋  (20011年9月)
■ 人質の朗読会    中央公論新社 (2011年2月)
■ 妄想気分    集英社 (2011年1月)
■ 小川洋子対話集 文庫版 幻冬舎(2010年8月)

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 刺繍する少女
 

著者: 小川洋子
出版社: 角川書店 
サイズ: 文庫
ページ数: 229p
発行年: 1999年
価格: 620円
わたしの感想文】
美しく、静謐な世界を描く小川作品。心の奥底に潜む邪気や闇の世界を描く小川作品。両方とも小川作品なのです。この本では両方の世界を描いた10の短編が収められています。
短編を続けて読んでしまったので、中には、印象に残らないもの、もう忘れてしまった短編もいくつかありました。

「刺繍する少女」は美しく、静謐な印象を与える作品に属すると思います。終末期を迎えた母がいるホスピスで、子供の頃に高原で遊んでいた少女に再会する。その少女はいつも刺繍をしていた。
刺繍をしているのですが、小川流独特のの身体の一部、ここでは刺繍する指に強いこだわりが見られます。例えば、
「彼女は僕の膝に布を広げた。二人の指があまりに近づき合っていたので、まるで彼女の手を握っているかのような錯覚が湧き上がってきた。・・・・・・・・・僕は女の子の髪飾りなど見ていなかった。あとわずか斜め横に指を動かしてら、本当に彼女に触れるこ
とができそうだった。でも、ほんのわずかのところで、その華奢な指は僕をすすり抜けてゆくのだ。」  そのこだわりはしかし、なんとも美しく感じます。母が亡くなった後のベッドシーツの刺繍を完成させた後、ひっそりといなくなってしまう少女の結末は秀逸です。

「図鑑」は、奇妙で、奇怪な印象を与える不気味さが持ち味で、、彼に寄せる説明できない不思議な執着と不倫の愛を描いた作品です。下の一文が印象に残りました。
「自分の中にもどこかにも、こんな寄生虫がいるかも知れない、とわたしは想像する。一匹の細い虫が、内臓の中を泳いでいく。そこは、暗闇で、生温かく、消化液のしみ出すくぐもった音だけがしている。あるいは、わたしが寄生虫になって、彼の中をさ迷うのはどうだろうか。入り組んだ内臓を、時間をかけて、隅々まで味わう。疲れたら、鈎形の吸着器を肉の壁に食い込ませ、ゆらゆらと休息する。そこは出口のない世界だ。」
この短編の最後の結末は、あまりにも気持ち悪くなりましたので、ここでは書きません。
 
 
【内容情報】(「BOOK」データベースより)

母がいるホスピスで僕は子供の頃高原で遊んだ少女に再会、彼女は虫を一匹一匹つぶすように刺繍をしていた―。喘息患者の私は第三火曜日に見知らぬ男に抱かれ、発作が起きる―。宿主を見つけたら目玉を捨ててしまう寄生虫のように生きようとする女―。死、狂気、奇異が棲みついた美しくも恐ろしい十の「残酷物語」。

【目次】(「BOOK」データベースより)

刺繍する少女/森の奥で燃えるもの/美少女コンテスト/ケーキのかけら/図鑑/アリア/キリンの解剖/ハウス・クリーニングの世界/トランジット/第三火曜日の発作

 

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プロフィール
HN:
つぶやき博士
性別:
男性
自己紹介:
何気なく本屋で手に取った本が「博士の愛した式」。以来小川作品の虜になる。小川ファンの9割は女性と思いますが、私はオトコ、しかも70才近くのおじいさんです。
みんなに嫌われる数学はわりと好きな理工系ですが、小説であれ、数学であれ、美しいモノには惹かれる今日この頃です。
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