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小川洋子さんの新刊本


■ 最果てアーケード    講談社    (2012年6月)
■ みんなの図書室    PHP研究所 (2011年12月)
■ 小川洋子の「言葉の標本」   文芸春秋  (20011年9月)
■ 人質の朗読会    中央公論新社 (2011年2月)
■ 妄想気分    集英社 (2011年1月)
■ 小川洋子対話集 文庫版 幻冬舎(2010年8月)

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夜明けの縁をさ迷う人々



著者: 小川洋子
出版社: 角川書店
サイズ: 単行本
ページ数: 206p
発行年: 2007年
価格: 1365円
わたしの感想文】

小川洋子さんの比較的最近の『野生時代』に掲載された短編集。小川洋子独特の魅力がいっぱいの短編集でした。
ありそうで現実にはありそうもない、風変わりな人や職業がいつものように登場し、はかなさ、消失感、残酷感、ほのぼの感、時にはユーモアと美しくも上品な不思議な世界を堪能させてくれました。

小川洋子さん独特の世界で、わたしが最も特徴的と思うのは、やはり現実と非現実との間での境界のなさと感じています。
生と死、消失と再生、わたしと他人、人間とモノ、これらをわたし達の常識では、無意識のうちにはっきり分けてききたように思います。小説の世界でも、たとえば、他人とは違う自我の強い主人公を描くやり方などが主流だったように思えます。しかし、小川作品では、この常識に、異議をとなえたり、強いメッセージを訴えるのでなく、ここは巧妙に境界線のない独特の世界を築いています。
小説スタイルは違いますが、川上弘美さんの一部の作品たとえば「蛇を踏む」とか、堀江敏幸さんの作品にも少し感じます。

短編「イービーのかなわぬ望み」では主人公の少年イービーとモノであるエレベーターとほとんど一体を感じるし、境界のなさは同化とも言えます。
短編「パラレルチョコレート」からの一節。ここでは、”生と死”について、見知らぬ老人が語る言葉に表れてきます。
”もし、幽霊がただ、死んだ人間を表現しておるならば、それは、違う。ワシは生きておる。お嬢さんの裏側で。もちろん昔は、お嬢さんと同じ側の住人だったのだが、まあ寿命というやつでこっち側に移住してきた”
別の作品で小川さんは、どんな人でも、お金持ちだった人も、不幸だった人も、ささやかに生きた人でも、死ぬ時は小さな元素に還ると述べていらっしゃるのを思い出しました。
 
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
もしあなたが世界からこぼれ落ちても、私が両手をのばして、受け止めよう―『博士の愛した数式』『ミーナの行進』の小川洋子が世界の片隅に灯りをともす、珠玉のナイン・ストーリーズ。

【目次】(「BOOK」データベースより)
曲芸と野球/教授宅の留守番/イービーのかなわぬ望み/お探しの物件/涙売り/パラソルチョコレート/ラ・ヴェール嬢/銀山の狩猟小屋/再試合



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プロフィール
HN:
つぶやき博士
性別:
男性
自己紹介:
何気なく本屋で手に取った本が「博士の愛した式」。以来小川作品の虜になる。小川ファンの9割は女性と思いますが、私はオトコ、しかも70才近くのおじいさんです。
みんなに嫌われる数学はわりと好きな理工系ですが、小説であれ、数学であれ、美しいモノには惹かれる今日この頃です。
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