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小川洋子さんの新刊本
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寡黙な死骸 みだらな弔い
価格 : 680円
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【わたしの感想文】 11の独立した短編集ですが、よく読んでみると、一つの 短編が次の短編に何らかのつながりがある連作集とな っています。たとえば、第1作で、息子を亡くした女の 主人公が訪れる洋菓子店の店員が第2作の「果汁」の 主人公となっています。この連作の手法は確かに読んで いて、”あれ!”と思い、次の短編ではどうなるのか?と 期待を持たせてくれます。その意味では、小川作品には 珍しい凝った演出が読み取れます。 さて、短編の内容ですが、一言で言えば、小川作品の 中では最も不気味な、そしてグロテスクな「ホラー小説」 または「怪奇小説」です。小川作品には「沈黙博物館」 をはじめ、生と死を扱った小説がいくつかありますが、 この作品ではすべて「死と弔い」が出てきます。どれも、 不思議な、そして不気味な話です。この感じは小川作品 の一側面でもあります。連作になっている怪奇小説なの で、結構、スリルがあって、ついつい読んでしまいます。 また、現実には絶対ありえないこと、例えば「心臓の仮 縫い」の短編では肉体の外に飛び出した心臓を鞄の中 に入れるための鞄作りを依頼された鞄職人などあっと 驚く、不気味な話が結構出てきます。 モノあるいは身体のパーツ、例えば、指、髪などに異常 な執着を示す描写は小川作品の一つの特徴ですが、 これは常識的には「異常」、「猟奇的」世界に入る。しかし 、この異常さの描写がなぜか、情緒的でなく、冷めた 観察者のような目で語られるのが独特といえるでしょう。 「死」と「弔い」のことですが、その独特な世界が描かれ ます。例えば、息子の誕生日に食べるはずだった苺の ショートケーキ。息子の死という精神または抽象の世界 →非常に微細なところま描写されたショートケーキに姿を 変え→そのショートケーキが腐敗して飛散し、なくなって しまう。→ 消失した後、また、別のモノに記憶される。 このパターンは他の章でも見られるもので、死の 形が別の具体的モノに置き換えられる。一番愛着、執着 した人,モノが、ある日、突然、死あるいは消失を迎える。 しかし、消失した後も別の形で記憶に残される。第1章の 「洋菓子屋の午後」では、息子が亡くなって相当経った後、 再度訪れたケーキ屋さんで、息子の死とは無関係の事情 で泣きながら電話している少女の姿となって反映される。 |
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内容情報】(「BOOK」データベースより) 息子を亡くした女が洋菓子屋を訪れ、鞄職人は心臓を採寸する。内科医の白衣から秘密がこぼれ落ち、拷問博物館でベンガル虎が息絶える―時計塔のある街にちりばめられた、密やかで残酷な弔いの儀式。清冽な迷宮を紡ぎ出す、連作短篇集。 【目次】(「BOOK」データベースより) 洋菓子屋の午後/果汁/老婆J/眠りの精/白衣/心臓の仮縫い/拷問博物館へようこそ/ギブスを売る人/ベンガル虎の臨終/トマトと満月/毒草 |
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プロフィール
HN:
つぶやき博士
性別:
男性
自己紹介:
何気なく本屋で手に取った本が「博士の愛した式」。以来小川作品の虜になる。小川ファンの9割は女性と思いますが、私はオトコ、しかも70才近くのおじいさんです。
みんなに嫌われる数学はわりと好きな理工系ですが、小説であれ、数学であれ、美しいモノには惹かれる今日この頃です。
みんなに嫌われる数学はわりと好きな理工系ですが、小説であれ、数学であれ、美しいモノには惹かれる今日この頃です。
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