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小川洋子さんの新刊本


■ 最果てアーケード    講談社    (2012年6月)
■ みんなの図書室    PHP研究所 (2011年12月)
■ 小川洋子の「言葉の標本」   文芸春秋  (20011年9月)
■ 人質の朗読会    中央公論新社 (2011年2月)
■ 妄想気分    集英社 (2011年1月)
■ 小川洋子対話集 文庫版 幻冬舎(2010年8月)

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 寡黙な死骸 みだらな弔い

著者       : 小川洋子
出版社    : 中央公論新社 
サイズ     : 文庫
ページ数  : 241p
発行年    : 2003年
価格        : 680円

 
わたしの感想文】

11の独立した短編集ですが、よく読んでみると、一つの
短編が次の短編に何らかのつながりがある連作集とな
っています。たとえば、第1作で、息子を亡くした女の
主人公が訪れる洋菓子店の店員が第2作の「果汁」の
主人公となっています。この連作の手法は確かに読んで
いて、”あれ!”と思い、次の短編ではどうなるのか?と
期待を持たせてくれます。その意味では、小川作品には
珍しい凝った演出が読み取れます。

さて、短編の内容ですが、一言で言えば、小川作品の
中では最も不気味な、そしてグロテスクな「ホラー小説」
または「怪奇小説」です。小川作品には「沈黙博物館
をはじめ、生と死を扱った小説がいくつかありますが、
この作品ではすべて「死と弔い」が出てきます。どれも、
不思議な、そして不気味な話です。この感じは小川作品
の一側面でもあります。連作になっている怪奇小説なの
で、結構、スリルがあって、ついつい読んでしまいます。
また、現実には絶対ありえないこと、例えば「心臓の仮
縫い」の短編では肉体の外に飛び出した心臓を鞄の中
に入れるための鞄作りを依頼された鞄職人などあっと
驚く、不気味な話が結構出てきます。

モノあるいは身体のパーツ、例えば、指、髪などに異常
な執着を示す描写は小川作品の一つの特徴ですが、
これは常識的には「異常」、「猟奇的」世界に入る。しかし
、この異常さの描写がなぜか、情緒的でなく、冷めた
観察者のような目で語られるのが独特といえるでしょう。

「死」と「弔い」のことですが、その独特な世界が描かれ
ます。例えば、息子の誕生日に食べるはずだった苺の
ショートケーキ。息子の死という精神または抽象の世界
→非常に微細なところま描写されたショートケーキに姿を
変え→そのショートケーキが腐敗して飛散し、なくなって
しまう。→ 消失した後、また、別のモノに記憶される。

このパターンは他の章でも見られるもので、死の
形が別の具体的モノに置き換えられる。一番愛着、執着
した人,モノが、ある日、突然、死あるいは消失を迎える。
しかし、消失した後も別の形で記憶に残される。第1章の
「洋菓子屋の午後」では、息子が亡くなって相当経った後、
再度訪れたケーキ屋さんで、息子の死とは無関係の事情
で泣きながら電話している少女の姿となって反映される。

 内容情報】(「BOOK」データベースより)

息子を亡くした女が洋菓子屋を訪れ、鞄職人は心臓を採寸する。内科医の白衣から秘密がこぼれ落ち、拷問博物館でベンガル虎が息絶える―時計塔のある街にちりばめられた、密やかで残酷な弔いの儀式。清冽な迷宮を紡ぎ出す、連作短篇集。

【目次】(「BOOK」データベースより)

洋菓子屋の午後/果汁/老婆J/眠りの精/白衣/心臓の仮縫い/拷問博物館へようこそ/ギブスを売る人/ベンガル虎の臨終/トマトと満月/毒草



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プロフィール
HN:
つぶやき博士
性別:
男性
自己紹介:
何気なく本屋で手に取った本が「博士の愛した式」。以来小川作品の虜になる。小川ファンの9割は女性と思いますが、私はオトコ、しかも70才近くのおじいさんです。
みんなに嫌われる数学はわりと好きな理工系ですが、小説であれ、数学であれ、美しいモノには惹かれる今日この頃です。
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