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小川洋子さんの新刊本


■ 最果てアーケード    講談社    (2012年6月)
■ みんなの図書室    PHP研究所 (2011年12月)
■ 小川洋子の「言葉の標本」   文芸春秋  (20011年9月)
■ 人質の朗読会    中央公論新社 (2011年2月)
■ 妄想気分    集英社 (2011年1月)
■ 小川洋子対話集 文庫版 幻冬舎(2010年8月)

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    猫を抱いて象と泳ぐ





著者: 小川洋子
出版社: 文芸春秋
サイズ: 単行本
ページ数: 359p
発行年: 2009年
価格: 1780円

わたしの感想文】

小川洋子さん魅力満載の作品で、わたしにとっては、数多くの小川作品の中でも最高傑作と思います。

博士の愛した数式」では、数式が秘めている美しさを見事に文学作品に仕立てあげました。今回はチェスとその棋譜をまるで詩のように感じ取ることができました。

奇抜なアイデアは今回もチェスのからくり人形という形で現れています。 しかもその少年は姿、形が全くわからないように、チェス盤の下にもぐりこんで指すという奇抜さです。
コンピューターやロボットとは明らかに違っています。主人公の伝説のチェスプレイヤー、”リトル・アリョーヒン”はこのからくり人形とほとんど同化してしています。指しているのは人間であるリトル・アリョーヒンの頭脳であり、動作や仕草はまるでリトル・アリョーヒンそのものです。将棋や囲碁では、コンピューターがかなり強くなっていますが、無機質な対戦でなく、ここに描かれているチェスの対戦は勝負だけでなく、もっと広く、芸術品を思わせる壮大さです。

また、特に印象に残るのは、少女ミイラの左肩にいつもひっそりと乗っている”鳩”の存在で、わたしはこれにしびれました。”・・・・それはミイラより存在感の薄い、慎み深い鳩だった。自分は紛れもない鳩なのだ、周囲に訴えかけるようなところが一切なかった。・・・ミイラがお辞儀しても首を傾けても鳩の体勢は変わらず、羽を折り畳んで前を見据えたまま、ただじっと肩に留まっていた。脚踏みもせず。胸も膨らませず、クウという鳴き声さえ漏らさなかった。”

小川洋子さんは自分の小説スタイルはずーと堅持しながらも、微妙に少しずつ変化しているように感じます。初期の作品、「妊娠カレンダー」や「密やかな結晶」でみられる”生存と消滅”などのテーマ性が深く狭く迫ってくる印象をもちますが、この「猫を抱いて象を泳ぐ」のように、テーマ性も全く消え、心地よさを出しながらも、より普遍的に、自我などちっぽけなモノは消えてより大きな宇宙の海を思わせる世界を描いているような印象を持ちます。壮大な宇宙の中で、密やかに、慎ましく、盤上に美しく展開される物語をわたし達はただ身をゆだねるだけです。

 
2009年初の涙!小川洋子の最高傑作登場。伝説のチェスプレイヤー、リトル・アリョーヒンの、ひそやかな奇跡を描き尽くした、せつなく、いとおしい、宝物のような長篇小説。

【内容情報】(「BOOK」データベースより)
伝説のチェスプレーヤー、リトル・アリョーヒンの密やかな奇跡。触れ合うことも、語り合うことさえできないのに…大切な人にそっと囁きかけたくなる物語です。


 
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つぶやき博士
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男性
自己紹介:
何気なく本屋で手に取った本が「博士の愛した式」。以来小川作品の虜になる。小川ファンの9割は女性と思いますが、私はオトコ、しかも70才近くのおじいさんです。
みんなに嫌われる数学はわりと好きな理工系ですが、小説であれ、数学であれ、美しいモノには惹かれる今日この頃です。
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