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司会者でもありますが、本当に活字中毒者らしく、私も番組も楽しく視聴しています。
今度、わが小川洋子さんが児玉清さんとの対談が実現しましたので、ここに抜粋を
紹介したいと思います。
タイトルは児玉清の「読書は最高!」 ゲストに小川洋子さんが登場しました。
PHP 20009年9月号です。
小川:小説や芸術は生み出す人間の想像力でできていますが、現実の世界が暗黒
であり、現実の世界が神秘なんですね。何を書いていいかわからなくなった時に、
現実の世界に目を向けたらそこに物語が一番あるんですよ。
現実の世界は、そこに自分の嘘を一滴たらしてみると、化学反応を起こして
全く違った世界になるんですね。小説家はそれを言葉で書き写していく。
『博士の愛した数式』も、少年がいて、年老いた落ちこぼれの数学者がいる。
この二人をどう結びつけようかと思った時に、野球をそこに一滴垂らしたんですね。
すると、江夏が突然出てきたわけです。背番号28をつけていた、阪神時代の江夏
しか博士は知らない、ということにしたらどうなるだろう。ここに記憶の問題が浮上
したんです。
児玉:28は完全数で、江夏の背番号がその数だったという話は、スリリングでしたね。
小川さんにとって、「スーパーカミオカンデ」との出会いはそうとう衝撃的だったよう
ですね。
小川:私は、アウシュビッツ強制収容所、ケルン大聖堂と並んで、人間が建築した造形物
の三本指に入ると思います。
児玉:アウシュビッツといえば、アンネ・フランク・・・・
小川:『アンネの日記』を読んだのは、彼女と同じ十三、四歳の時でした。隠れ家に閉じ
こもっている子でさえ、日記を書いているときは自由なのだと、言葉の持つ力を教え
られましたね。
児玉:もともと本好きでした?
小川:はい。ただ、最初に夢中になったのが『家庭の医学』(笑)。
私は、「病気を患った人はどういう運命を辿るか」に興味があったんですね。
児玉:小川さんには、ぜひ、魂が震えるような長尺物を書いていただきたいな。
小川:チェスを題材にした本が今年出版されます。私の作品の中で一番長い小説です。
(管理者注 この本は「猫を抱いて象と泳ぐ」というタイトルで出版されました。)
実はチェスは指せないんですよ。指したいのかというとそれもない。だから私は、
ある距離を置いて、手を出さずに物陰からじーっと観察している人間なのだと
思います。 小説も書き手の感情を入れないほうがうまくいくんですよ。
感情は読み手が感ずるものであって、「書き手が予め感情を入れておくと邪魔に
なる」ということが書いているうちにだんだんわかってきたんですね。
児玉:ある名優の言った言葉に「客を泣かせないで、自分が泣いてどうする」というのが
あります。僕も以前は、自分が泣いて、客を泣かせようと思っていたところが
ありましたね。
小川:俳句とか数式とか、型の中に静かに収まっている、すべてを削ぎ落とした一行こそ
が、実は最も美しく、最も多くを物語っているのかも知れません。
※ 参考 児玉 清さんの略歴
俳優、タレント、司会者、作家
本名、北川 清
児玉清事務所代表
学習院大学文学部ドイツ文学科入学後、
演劇部に入部
1年先輩でフランス文学科の篠沢秀夫
(現・学習院大学名誉教授)が企画していた仏語劇『ブリタニキュス』
の主役に抜擢され,俳優としてデビュー。
以後、数多くの映画、TVドラマに出演、司会者としても活躍。
無類の読書家として、名を馳せています。
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評論家福田和也さんが、特に作家に衝撃を与え、物議を醸したと言われる本「作家の
値打ち」を読みました。ここには、エンターテイメントと純文学に分けて選んだ現役作家
(2000年時点)100人の作品をなんと、点数表示で作品を評価するという前代未聞
のことをやってしまっています。その点数の基準というのは
※ 引用は福田和也著「作家の値打ち」です。
点 数 | 評 価 |
90点以上 | 世界文学の水準で読みうる作品 |
80点以上 | 近代日本文学の歴史に銘記されるべき作品 |
70点以上 | 現在の文学として優れた作品 |
60点以上 | 再読に値する作品 |
50点以上 | 読む価値がある作品 |
40点以上 | 何とか小説になっている作品 |
39点以下 | 人に読ませる作品になっていない作品。 |
29点以下 | 人前で読むと恥ずかしい作品。もしも読んでいたら、秘密にした方が良い |
「わが人生の時の時」となっていました。
そこで気になるのがわが小川洋子さん、どんな評価になっているのか、ここに
この本から小川洋子さんの部分を全文引用します。
■ 小川洋子評
周到な作家である。企みが深い、と云い直してもよい。 一筋縄ではいかない厄介な
思念を透明感あふれるイメージの中で結実してみせる手腕は比類がない。
きわめて邪悪なものを誰もが魅惑されざるをえないような結晶体として見せてしまう、
あるいは邪まな行為を誰もが加担せざるをえない行為として提示する感覚はまさしく
独特のものと云わねばなるまい。「アンネの日記」の影響が云々されるが、誤解して
ならないのは、作者の感覚は、主題はどうであれ、迫害される側でなく迫害する側に
あるということだろう。もしくは、迫害する者よりもより邪悪な者として迫害される者が
立っているということだろう。
・ 「冷めない紅茶」 73点
読み手を、しかもそれが手練れであればあるほど困惑させる小説である。死者
との交流という題材が、かくもそっけなく日常の退屈と地続きで扱われていいの
だろうか、と自問させられる。その自問自体に仕掛けをめぐらしている。
・ 「妊娠カレンダー」 68点
近親者の妊娠という題材によって、作者の悪意は掴み易いものになっているが、
その心理的径庭は、通俗的合理性とは無縁な独自の論理を維持している。
・ 「密やかな結晶」 60点
記憶が狩られる社会という、いわばSF的な設定をあたかも日常の一現象のように
記しながら、「喪失」という近代文学の本質にかかわる問題に切り込んで見せた
野心作。
・ 「やさしい訴え」 76点
チェンバロ製作者をめぐる三角関係とい題材のうちに、作家としてのエレガントさ、
あるいは繊細さと、その裏側にある邪悪な暴力性を、最高度に見事に一致させて
いる。
・ 「寡黙な死骸 みだらな弔い」 56点
きわめて邪まな結構をもった小品からなる短編集。それぞれ作者らしい設定で
読ませるが、いささか水増しされた印象は拭い難い。
■ 福田和也評の感想
小川さん自身も多分この評価を読んでおられたと思いますが、どんな感慨か伺い
知ることはできません。もちろん、福田評にモノ申したいことはヤマほどあっても、
あるいは的をえているかな?思われたしても、小川さんは内に秘め、広言される
ことは決してないでしょう。
わたしみたいな小川中毒者にとっては、評価点に大いなる不満が残るのは当然
ですが、というか、福田さんがどんな評価をしようが、あまり、関係ないのです。
意外だったのは”周到な作家である。企みが深い、と云い直してもよい。”という評
でした。とり挙げられた作品が小川さんの初期の作品ばかりだったのが影響して
いると思ってしまいました。最近の作品についていえば、、用意周到、企みが深い
とは、わたしは全く感じません。もちろん、無垢ではないけれど、計算されない
自然さと静謐感で物語が語られている印象です。
初期の作品では、人間がもつ邪悪なモノ、正常なモノの境界線のなさを物語る
作品が確かにあると感じますが、これが、用意周到、企みが深い視点からの
描写でしょうか?本当のところ、小川さん自身が読者には決して言わない用意
周到さを秘めているかも知れませんが、批評家として専門性からそう読めるのか、
わたしみたいな素人には、単なる深読み過ぎでは?と思う位です。
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みんなに嫌われる数学はわりと好きな理工系ですが、小説であれ、数学であれ、美しいモノには惹かれる今日この頃です。