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小川洋子さんの新刊本


■ 最果てアーケード    講談社    (2012年6月)
■ みんなの図書室    PHP研究所 (2011年12月)
■ 小川洋子の「言葉の標本」   文芸春秋  (20011年9月)
■ 人質の朗読会    中央公論新社 (2011年2月)
■ 妄想気分    集英社 (2011年1月)
■ 小川洋子対話集 文庫版 幻冬舎(2010年8月)

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芸能界随一の読書好きと知られている児玉清さん。NHK「週刊ブックレビュー」の
司会者でもありますが、本当に活字中毒者らしく、私も番組も楽しく視聴しています。
今度、わが小川洋子さんが児玉清さんとの対談が実現しましたので、ここに抜粋を
紹介したいと思います。
タイトルは児玉清の「読書は最高!」 ゲストに小川洋子さんが登場しました。
PHP 20009年9月号です。

小川:小説や
芸術は生み出す人間の想像力でできていますが、現実の世界が暗黒
    であり、現実の世界が神秘なんですね。何を書いていいかわからなくなった時に、
    現実の世界に目を向けたらそこに物語が一番あるんですよ。
    現実の世界は、そこに自分の嘘を一滴たらしてみると、
化学反応を起こして
    全く違った世界になるんですね。小説家はそれを言葉で書き写していく。
    『
博士の愛した数式』も、少年がいて、年老いた落ちこぼれの数学者がいる。
    この二人をどう結びつけようかと思った時に、野球をそこに一滴垂らしたんですね。
    すると、
江夏
が突然出てきたわけです。背番号28をつけていた、阪神時代の江夏
    しか博士は知らない、ということにしたらどうなるだろう。ここに記憶の問題が浮上
    したんです。

児玉:28は
完全数で、江夏の背番号がその数だったという話は、スリリングでしたね。
    小川さんにとって、「
スーパーカミオカンデ」との出会いはそうとう衝撃的だったよう
    ですね。

小川:私は、アウシュビッツ強制収容所、ケルン大聖堂と並んで、人間が
建築した造形物
         の三本指に入ると思います。

児玉:アウシュビッツといえば、アンネ・フランク・・・・

小川:『アンネの日記』を読んだのは、彼女と同じ十三、四歳の時でした。隠れ家に閉じ
        こもっている子でさえ、日記を書いているときは自由なのだと、言葉の持つ力を教え
        られましたね。
 
児玉:もともと本好きでした?

小川:はい。ただ、最初に夢中になったのが『家庭の医学』(笑)。
        私は、「
病気を患った人はどういう運命を辿るか」に興味があったんですね。

児玉:小川さんには、ぜひ、魂が震えるような長尺物を書いていただきたいな。

小川:チェスを題材にした本が今年
出版されます。私の作品の中で一番長い小説です。
        (管理者注  この本は「
猫を抱いて象と泳ぐ」というタイトルで出版されました。)
    実はチェスは指せないんですよ。指したいのかというとそれもない。だから私は、
    ある距離を置いて、手を出さずに物陰からじーっと観察している人間なのだと
    思います。 小説も書き手の感情を入れないほうがうまくいくんですよ。
    感情は読み手が感ずるものであって、「書き手が予め感情を入れておくと邪魔に
    なる」ということが書いているうちにだんだんわかってきたんですね。

児玉:ある名優の言った言葉に「客を泣かせないで、自分が泣いてどうする」というのが
    あります。僕も以前は、自分が泣いて、客を泣かせようと思っていたところが
    ありましたね。

小川:俳句とか数式とか、型の中に静かに収まっている、すべてを削ぎ落とした一行こそ
    が、実は最も美しく、最も多くを物語っているのかも知れません。

 ※ 参考 児玉 清さんの略歴
        俳優、タレント、司会者、作家
        本名、北川 清
        児玉清事務所代表
               学習院大学文学部ドイツ文学科入学後、
               演劇部に入部
               1年先輩でフランス文学科の篠沢秀夫
               (現・学習院大学名誉教授)が企画していた
仏語劇『ブリタニキュス』
                  の主役に抜擢され,俳優としてデビュー。
        以後、数多くの映画、TVドラマに出演、司会者としても活躍。
        無類の読書家として、名を馳せています。

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 福田和也著「作家の値打ち」
  評論家福田和也さんが、特に作家に衝撃を与え、物議を醸したと言われる本「作家の
  値打ち」を読みました。ここには、エンターテイメントと純文学に分けて選んだ現役作家
  (2000年時点)100人の作品をなんと、点数表示で作品を評価するという前代未聞
  のことをやってしまっています。その点数の基準というのは 
    ※ 引用は福田和也著「
作家の値打ち」です。 
点 数 評 価
90点以上 世界文学の水準で読みうる作品
80点以上 近代日本文学の歴史に銘記されるべき作品
70点以上 現在の文学として優れた作品
60点以上 再読に値する作品
50点以上 読む価値がある作品
40点以上 何とか小説になっている作品
39点以下 人に読ませる作品になっていない作品。
29点以下 人前で読むと恥ずかしい作品。もしも読んでいたら、秘密にした方が良い
 ちなみに最高得点は96点村上春樹著ねじまき鳥クロニクル」、96点石原慎太郎著
 「
わが人生の時の時
となっていました。
 そこで気になるのがわが小川洋子さん、どんな評価になっているのか、ここに
 この本から小川洋子さんの部分を全文引用します。
 引用元は  福田和也著作家の値打ち 」 飛鳥新社 2000年4月発行です。
 ■ 小川洋子評 
   周到な作家である。企みが深い、と云い直してもよい。 一筋縄ではいかない厄介な
   思念を透明感あふれるイメージの中で結実してみせる手腕は比類がない。
   きわめて邪悪なものを誰もが魅惑されざるをえないような結晶体として見せてしまう、
   あるいは邪まな行為を誰もが加担せざるをえない行為として提示する感覚はまさしく
   独特のものと云わねばなるまい。「アンネの日記」の影響が云々されるが、誤解して
   ならないのは、作者の感覚は、主題はどうであれ、迫害される側でなく迫害する側に
   あるということだろう。もしくは、迫害する者よりもより邪悪な者として迫害される者が
   立っているということだろう。
   ・ 「冷めない紅茶」  73点  
     読み手を、しかもそれが手練れであればあるほど困惑させる小説である。死者
           との交流という題材が、かくもそっけなく日常の退屈と地続きで扱われていいの
           だろうか、と自問させられる。その自問自体に仕掛けをめぐらしている。
   ・ 「
妊娠カレンダー
」  68点  
      近親者の妊娠という題材によって、作者の悪意は掴み易いものになっているが、
               その心理的径庭は、通俗的合理性とは無縁な独自の論理を維持している。
    ・ 「
密やかな結晶」    60点        
      記憶が狩られる社会という、いわばSF的な設定をあたかも日常の一現象のように
                記しながら、「喪失」という近代文学の本質にかかわる問題に切り込んで見せた
                野心作。
    ・ 「
やさしい訴え」     76点  
      チェンバロ製作者をめぐる三角関係とい題材のうちに、作家としてのエレガントさ、
                あるいは繊細さと、その裏側にある邪悪な暴力性を、最高度に見事に一致させて
                いる。
    ・ 「
寡黙な死骸 みだらな弔い」  56点  
      きわめて邪まな結構をもった小品からなる短編集。それぞれ作者らしい設定で
                読ませるが、いささか水増しされた印象は拭い難い。
 ■ 福田和也評の感想
     小川さん自身も多分この評価を読んでおられたと思いますが、どんな感慨か伺い
             知ることはできません。もちろん、福田評にモノ申したいことはヤマほどあっても、
             あるいは的をえているかな?思われたしても、小川さんは内に秘め、広言される
             ことは決してないでしょう。
     わたしみたいな小川中毒者にとっては、評価点に大いなる不満が残るのは当然
     ですが、というか、福田さんがどんな評価をしようが、あまり、関係ないのです。
     意外だったのは”周到な作家である。企みが深い、と云い直してもよい。”という評
     でした。とり挙げられた作品が小川さんの初期の作品ばかりだったのが影響して
     いると思ってしまいました。最近の作品についていえば、、用意周到、企みが深い
     とは、わたしは全く感じません。もちろん、無垢ではないけれど、計算されない
          自然さと静謐感で物語が語られている印象です。
     初期の作品では、人間がもつ邪悪なモノ、正常なモノの境界線のなさを物語る
     作品が確かにあると感じますが、これが、用意周到、企みが深い視点からの
     描写でしょうか?本当のところ、小川さん自身が読者には決して言わない用意
     周到さを秘めているかも知れませんが、批評家として専門性からそう読めるのか、
     わたしみたいな素人には、単なる深読み過ぎでは?と思う位です。

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           下さい。      
小川洋子の世界



 
  
   




  


 カラーひよことコーヒー豆


著者: 小川洋子
出版社: 小学館
サイズ: 単行本
ページ数: 156p
発行年: 2009年
価格: 1260円

わたしの感想文】

小川洋子さん、第3作目のエッセイ集。
何気ない日常の一コマ、を、宝石のように掬い上げるその心地良さは健在でした。
「結晶のような個性」では、小川さんが好きな歴代のアイススケート選手のことを語っていまし。孤独な武士伊藤みどり、能舞台の荒川静香、健気な村主章枝、妖艶安藤美姫、可憐な浅田真央、情熱の深さ高橋大輔と表現していました。中でも、荒川静香には、”スケートが醸し出す独特の静謐さ、厳かさには能舞台を連想させるものがあった。何事が起ころうとも動じない落ち着き、すべてを無言のうちに受け入れるしなやかさ、ピンと身体の中心を貫く緊張感、そうした彼女の魅力の数々は、間違いなく日本人の遺伝子が生み出していた。」 言われてみれば、この荒川静香評は小川さんの小説から受ける印象に非常に近いと思いました。
「思い出のリサイクル」では、いかにも小川さんらしい日常が語られています。その話というのは、小川さんが最も効率よくリサイクルしているのは、思い出であると言っています。”他の人から見たら何でもない些細な思い出を大事にし、繰り返し何度でもよみがらえせて、その度に、感動を新たにすることができる。自分でもこれはちょっと自慢していい才能ではないかと、秘かに胸をはっている。”。”思い出を作ろうとして躍起になるよりも。時には既にある思い出の中に隠れた喜びがないかどうか、探ってみるのもいいかも知れない”と述べています。

 

【内容情報】(「BOOK」データベースより)
雑誌『Domani』に2年間にわたり連載したエッセイに書下ろしを加え、待望の単行本化。泣きたいほど優しい気持ちになれる、愛に充ちたエッセイ集。

【目次】(「BOOK」データベースより)
世界一孤独な人/幸福なお化粧/思い出からやって来る人/働く人の姿/大人の女性とは/本物のご褒美/黙々と労働する人/言葉の天使、通訳という仕事/人と人が出会う手順/神様の計らい〔ほか〕

 
 


 
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   妄想気分




  


 
著者: 小川洋子
出版社: 集英社
サイズ: 単行本
ページ数: 187p
発行年: 2011年
価格: 1365円

わたしの感想文】

小川洋子さん、最新第4作目のエッセイ集。
小川洋子ファンにとっては、隅から隅まで読みたいエッセイとなっていますが、題材はいつもの創作にかかわるあれこれ、さりげない日常の出来事と思い出話、出会い、と変わってはいません。今回、個人的に面白かったのは、
1)ご主人のこと
2)自著の裏話が語られた”書かれたもの、書かれなかったもの” でした。

作家としての、そして妻としての小川洋子さんがご主人をどう思っていらっしゃるのか、個人的にはとても興味深かったのですが、今までちらちらとエッセイで読んでいたのでしたが、詳しいところまではわかりませんでした。今回、それこそ”相手を思う気持ちを、形のない気配に変えて”のタイトル通り、かなり心情を語っておられます。ご主人へのその微妙で、絶妙な関係性がなるほどと思ってしまいました。

自著の裏話、処女作”揚羽蝶が壊れる時”から最新の”原稿零枚日記”まで各作ごとに、今まで語られなった裏話、小話が書かれています。その一つ一つが小川病に罹っている私にとって面白かったのですが、一番面白かったのは”ミーナの行進”誕生の話でした。依頼を承知したものの一向に準備が進まない段階で、担当編集者と出くわってしまった小川さん、思わず”おかげさまで、小説の骨格が固まりました”と心にもないことを口走ってしまった顛末が秀逸でした。

 
 
 

【内容情報】(「BOOK」データベースより)
異界はいつでも日常の中にある。目を凝らし耳を澄ますと入口が見えてくる。そこを覗くと物語がはじまる。創作をめぐるエッセイ集。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 想い出の地から(甲子園球場/武蔵小金井女子学生寮 ほか)/第2章 創作の小部屋(恐る恐る書く/消えた小説 ほか)/第3章 出会いの人、出会いの先に(ローズ・マリーという名前/そこにいてくれる、ありがたさ ほか)/第4章 日々のなかで(一枚の写真/髪 ほか)/第5章 自著へのつぶやき 書かれたもの、書かれなかったもの(揚羽蝶が壊れる時/完璧な病室/冷めない紅茶 ほか)


 

 
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プロフィール
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つぶやき博士
性別:
男性
自己紹介:
何気なく本屋で手に取った本が「博士の愛した式」。以来小川作品の虜になる。小川ファンの9割は女性と思いますが、私はオトコ、しかも70才近くのおじいさんです。
みんなに嫌われる数学はわりと好きな理工系ですが、小説であれ、数学であれ、美しいモノには惹かれる今日この頃です。
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