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小川洋子さんの新刊本
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アンジェリーナ (佐野元春と 10の短編)
価格: 420円
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【わたしの感想文】 当時、月間カドカワの編集長だった豪腕、見城徹氏(現 幻冬舎社長)が小川洋子さんを強引に説得して生まれた 作品である。 尋常でない才能を見抜いた見城徹氏のさすがの見識で あった。早稲田大学学生時代から熱烈なファンであった ロックシンガー佐野元春の曲を題材にして小説を創作 するという今までにない斬新な企画でこの短編集が世に でることとなった。 この短篇集は小川さんが大ファンである佐野元春の曲 のタイトルから採られた「アンジェリーナ」、「バルセロナ の夜」、「彼女はデリケート」、「誰かが君のドアを叩いて いる」、「奇妙な日々」、「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日々 」、「また明日・・・」、「クリスマスタイム・イン・ブルー」、 「ガラスのジェネレーション」、「情けない週末」の10篇が 収められています。10編の原曲のタイトルに、著者小川 洋子が付けた小説としての副題が付けられている。 また、各短編の冒頭には佐野元春原曲の歌詞が添え らている。佐野元春の歌詞そのものはわたしにとっては、 ほとんど理解できない遠い世界であったが、小説という 物語りになると結構楽しむことができた。 10編の短編の中で、印象深かったのは、やはり「アン ジェリーナ」でした。副題は「ー君が忘れた靴ー」。 誰かが駅のベンチに置き忘れたダンスシューズ、その シューズにはアンジェリーナという女性の名前の刺繍が つけられている。それを拾った僕、持ち主探しの小さな 広告から持ち主の元ダンサーの若い女性と出会う、 取りにきた僕の部屋で、そのシューズを再度、置き忘 れる。もちろんわざとである。二度目の再会でも、結局 僕の部屋にそのシューズがずっと保管されることになる。 ストーリーとしてはある意味では何てことない物語では あるが、そこに小川洋子独特の核心(境界のない世界 ーここでは足という身体とシューズというモノの境界線が なくなるー)が見事に刷り込まれている。以下の描写が あります。 「トウシューズは肌の一部のようにぴったりと足をつつん でいた。爪先の曲線やリボンの結びめが、彼女を縁取る 輪郭と一続きになっていた。壊れそうなくらい華奢なのに、 毅然としたしなやかさがあった。それは足というより、一つ の奇跡だった。」 この一説は1年後に出版された小川洋子の代表的名作 「薬指の標本」、似た場面の描写があり、この短編が 伏線となっているとわたしは思います。 |
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【内容情報】(「BOOK」データベースより) 駅のベンチで拾ったピンクのトウシューズに恋した僕は、その持主の出現を心待ちにする―「アンジェリーナ」。猫のペーパーウェイトによって導かれたベストセラー小説とは―「バルセロナの夜」。佐野元春の代表曲にのせて、小川洋子が心の震えを奏でて生まれた、美しい10の恋物語。物語を紡ぐ精霊たちの歌声が聞こえてくるような、無垢で哀しく、愛おしい小説集。 【目次】(「BOOK」データベースより) アンジェリーナ/バルセロナの夜/彼女はデリケート/誰かが君のドアを叩いている/奇妙な日々/ナポレオンフィッシュと泳ぐ日/また明日…/クリスマスタイム・イン・ブルー/ガラスのジェネレーション/情けない週末 |
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プロフィール
HN:
つぶやき博士
性別:
男性
自己紹介:
何気なく本屋で手に取った本が「博士の愛した式」。以来小川作品の虜になる。小川ファンの9割は女性と思いますが、私はオトコ、しかも70才近くのおじいさんです。
みんなに嫌われる数学はわりと好きな理工系ですが、小説であれ、数学であれ、美しいモノには惹かれる今日この頃です。
みんなに嫌われる数学はわりと好きな理工系ですが、小説であれ、数学であれ、美しいモノには惹かれる今日この頃です。
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