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小川洋子さんの新刊本


■ 最果てアーケード    講談社    (2012年6月)
■ みんなの図書室    PHP研究所 (2011年12月)
■ 小川洋子の「言葉の標本」   文芸春秋  (20011年9月)
■ 人質の朗読会    中央公論新社 (2011年2月)
■ 妄想気分    集英社 (2011年1月)
■ 小川洋子対話集 文庫版 幻冬舎(2010年8月)

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    偶然の祝福

著者: 小川洋子
出版社: 角川書店 
サイズ: 文庫
ページ数: 201p
発行年: 2004年
価格: 500円
わたしの感想文】

7つの小編が収められた短編集。
「失踪者たちの王国」「盗作」「キリコさんの失敗」
「エーデルワイス」「涙腺水晶結石症」「時計工場」「蘇生」の七編である。
短編だけあって、小川洋子さんの小説にしては、非常に読みやすく、そしてわかりやすい。現実と幻想が渾然とする小川作品の中にあっては、どちらかと言えば、現実世界に近いので、小川洋子嫌いの人でもそんなに抵抗感を感じないでしょう。

この短編集の中で、「キリコさんの失敗」が私のお気に入りの作品です。素直に心地よい読後感を持つ作品です。やや「博士の愛した数式」に似た心地よさで、いつも背後にある不気味さはでてきません。

キリコさんというお手伝いさんを語った短編で,お得意は無くしたものを取り戻してくれる達人。リコーダー、万年筆をなくした時も、魔法のように無くし物を取り戻してくれる。恩着せがましくもなく、何気なく幸福を運んでくれる素敵なお手伝いさんが微笑ましい。最後に「服部さん」違いの人に大事な壷を間違えて渡してしまい、責任を感じてか静かに「さようなら」とだけ言って静かに去って行く。

ところで、本のタイトル「偶然の祝福」、これが暗示的である。「キリコさんの失敗」の短編でも、服部さん違いが全くの偶然の出来事。「盗作」の短編でもほとんど同じ題材、物語の小説に偶然遭遇する。
世の中に偶然はなく必ず必然性があるという人もいますが、そんなに単純な世界は面白くない。世の中、人の人生には実は秘められた偶然に満ち溢れているのではないかと思う。この偶然が不幸を招こうと、幸せをもたらそうと、偶然こそが人生の本質、そういう意味では「祝福」されるモノに違いない。
 【内容情報】(「BOOK」データベースより)

お手伝いのキリコさんは私のなくしものを取り戻す名人だった。それも息を荒らげず、恩着せがましくもなくすっと―。伯母は、実に従順で正統的な失踪者になった。前ぶれもなく理由もなくきっぱりと―。リコーダー、万年筆、弟、伯母、そして恋人―失ったものへの愛と祈りが、哀しみを貫き、偶然の幸せを連れてきた。息子と犬のアポロと暮らす私の孤独な日々に。美しく、切なく運命のからくりが響き合う傑作連作小説。


 

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プロフィール
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つぶやき博士
性別:
男性
自己紹介:
何気なく本屋で手に取った本が「博士の愛した式」。以来小川作品の虜になる。小川ファンの9割は女性と思いますが、私はオトコ、しかも70才近くのおじいさんです。
みんなに嫌われる数学はわりと好きな理工系ですが、小説であれ、数学であれ、美しいモノには惹かれる今日この頃です。
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