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小川洋子さんの新刊本


■ 最果てアーケード    講談社    (2012年6月)
■ みんなの図書室    PHP研究所 (2011年12月)
■ 小川洋子の「言葉の標本」   文芸春秋  (20011年9月)
■ 人質の朗読会    中央公論新社 (2011年2月)
■ 妄想気分    集英社 (2011年1月)
■ 小川洋子対話集 文庫版 幻冬舎(2010年8月)

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著者  : 小川洋子
出版社  : PHP研究所 
サイズ  : 新書
ページ数  : 317p
発行年  : 2009年
 
価格     : 882円

   
 【わたしの感想文】

 本好きの人のための番組といえば、NHKTVの”週刊ブック”と小川洋子パーソナリティのTOKYO FM番組「Melodious Library」くらいしかなくて、わたしも両方良く聴いています。この本ではこのFM番組で紹介した本の中から52冊が選んであります。わたし自身はこの52冊の中で、実際に読んだことのある本は僅か4冊だったのですが、読者案内として愉しみました。

本の書評といえば、文芸評論家と学者とか、実際は小説を書いたことはない人の書評はどうも心に響いてこないというのがわたしの感想なのですが、さすがにこの書評は一味違います。
○ 読者の目から見た感想なので、深読みしたり、いたずらに分析めいた所がなく素直になるほどなるほどと共感できます。また、作家という目からみた感想があって、書き手側からの見方も面白く読めます。
○ 構成はどの本も5ページくらいにきちんと収められていて、しかも作者の略歴が分かりやすく解説されているのは好感が持てます。また、さすがに作家だなと思わせているのは、ご自分の書いた文章と本の中で印象に残った一節はきちんと引用されて、毅然と分けていることす。

紹介されたどの本にも、作家小川洋子の視点、感じ方というのが随所にでてきます。例えば、
○ ファーブル「昆虫記」 :”ただ、理科的な知識を与えることにとどまらず、虫の世界に神様が施したいろいろな秘密のしかけを物語のように味わって読むことができるのです。”
○ 佐野洋子「100万回生きた猫」 :"佐野さんはどんなに短い人生でも、その子の人生はその中で完結しているのだ、といいます。・・・・・生まれ変わってまた会えるということに救いを見出すのでなく、一つの生と死を全うした存在として人を見送る。この精神はようやく完結した死を迎えることができた猫の死に方につながっていると思います。”
○ 川端康成「片腕」 :”もしかしたら、自分の中にも、こういう狂気、醜さ、あるいは残酷さといった邪悪なものが潜んでいるのではないか、、それを自分自身も気づかずにいるのに、「片腕」を読んでしまったために気づかなくてもいいことに気づいてしまうのではないか・・そういう恐ろしさがあります。”
○ 芥川龍之介「羅生門」 :”一切の無駄を廃し、研ぎすまされた最小限の言葉だけで、鮮やかな情景を浮かび上がらせています。文章はキラキラと装飾されているから美しいのでなく、むしろ飾りがないから、美しいのだということをあらめて感じます。”
○ 宮本輝「錦粛」 :”私自身は、死んだ人と生きている人は決して断絶していない、つながっている。生きている人の中に、死者の記憶が残っているのであれば、生きている人と死んでいる人は一体となって生きている・・・・と思っています。”
○ カレル・チャペック「ダーシェンカ」: 人間と人間はお互い分かり合おうとして、いろいろな言葉を尽くして自分のことを説明しようとします。それでもすれ違ったり、誤解しあったりするのに、犬と人間という言葉が通じない同士でも、愛と信頼で心を通わせ合える。そういう奇跡的な体験を犬がさせてくれるのです。言葉を持たない生きものの偉大さをそこに見るような気持ちです。
  内容情報】(「BOOK」データベースより)

人間が虫になることよりも、さらに不気味な不条理を描いている『変身』(カフカ)。言葉では書けないことを言葉で書いた『風の歌を聴け』(村上春樹)。「自分のために詠まれたのでは」と思える歌が必ずある『万葉集』…。小川洋子さんと一緒に、文学の喜びを分かち合いませんか?本書では未来に残したい文学遺産を52編紹介します。若い方にとっては最高の文学入門。「本の虫」を自認する方にとっては、新たな発見が必ずある作品論です。人気のFM番組「Melodious Library」、待望の書籍化。

【目次】(「BOOK」データベースより)

第1章 春の読書案内(『わたしと小鳥とすずと』金子みすゞ―一個人の感情を越えた寂しさ、切なさ/『ながい旅』大岡昇平―謝罪する時にこそ、人間の本質があらわれる ほか)/第2章 夏の読書案内(『変身』カフカ―人間が虫になる不条理よりも不気味なもの/『父の帽子』森茉莉―父に溺愛された娘の自由自在な精神 ほか)/第3章 秋の読書案内(「ジョゼと虎と魚たち」田辺聖子―男の子なら愛さないではいられないジョゼの女心/『星の王子さま』サン・テグジュペリ―肝心なことはいつでも心の中にある ほか)/第4章 冬の読書案内(『グレート・ギャツビー』スコット・フィッツジェラルド―絶望という一点にのみ突き進んでゆく悲劇/『冬の犬』アリステア・マクラウド―厳寒の島に暮らす少年と犬の別れを、淡々と描く ほか)
 

 


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プロフィール
HN:
つぶやき博士
性別:
男性
自己紹介:
何気なく本屋で手に取った本が「博士の愛した式」。以来小川作品の虜になる。小川ファンの9割は女性と思いますが、私はオトコ、しかも70才近くのおじいさんです。
みんなに嫌われる数学はわりと好きな理工系ですが、小説であれ、数学であれ、美しいモノには惹かれる今日この頃です。
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