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小川洋子さんの新刊本


■ 最果てアーケード    講談社    (2012年6月)
■ みんなの図書室    PHP研究所 (2011年12月)
■ 小川洋子の「言葉の標本」   文芸春秋  (20011年9月)
■ 人質の朗読会    中央公論新社 (2011年2月)
■ 妄想気分    集英社 (2011年1月)
■ 小川洋子対話集 文庫版 幻冬舎(2010年8月)

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    生きるとは自分の
物語をつくること


著者: 小川洋子
河合隼雄
出版社: 新潮社
サイズ: 単行本
ページ数: 156p
発行年: 2008年
価格: 1365円
わたしの感想文】

小川洋子作品では珍しい対談集。お相手は臨床心理学者の河合隼雄博士。河合隼雄博士はその商売柄、対談の名手として良く知られています。多くの河合隼雄対談集がありますが、作家では村上春樹、吉本ばななとの対談集を私は読んだことがあります。

この対談集の編集過程で河合先生が突然倒られ、2007年7月19日逝去されました。このため、「二人のルートー少し長すぎるあとがき」として、追悼を兼ねた河合先生への尊敬あふれる小川洋子さんのあとがきが付いています。その意味では河合先生最後の貴重な対談集となっています。

河合先生は対談の名手と同時に、ダジャレの名手でもありますので、聞き上手で冗談を飛ばしながら、肝心な点の質問がぽんぽん出てきて、楽しく読むことができます。
対談の主題は「物語」。これが生きることと密接につながっているということですが、最初は何のことかとわかりませんでした。物語のエピソードとして出てくるのが、あの「博士の愛した数式」に登場する家政婦さんの息子”ルート”です。ルートという名前は小川さんは数学記号の√(ルート)から命名したわけです。ところが、河合先生は「博士の愛した数式」の映画を見た時、ダジャレではありますが、息子のルート君を見て「ルーツ」、すなわち、道を開く、ルーツ(根源)と感じたそうです。博士と息子は、自然な形結びついていると絶賛していました。これには後日談があって、小川さんが「アンネの日記」の件でオランダ訪問した際、アンネ関係者の中に「ルート」さんという方に会ったことを突然思い出したそうです。「ルート」さんは決してでしゃばらず、周囲の人たちに気を配る紳士で、ルート君は偶然同じ名前だったわけですが、なぜか二人は無関係ではないのではないかと語っています。私はこれが物語の象徴ではないかと勝手に考えました。

小川洋子作品で、不思議な小動物が登場する「ブラフマンの埋葬」のタイトル”ブラフマン”について河合先生は「ブラフマンというのはユングが大好きな言葉ですよ」といっていました。ブラフマンという名前も辞書で何気なく付けた名前だそうですが、この続きをする約束が叶わずに終わってしまいましたが、何か縁を感じます。 あとがきの中で小川洋子は「人生は物語だなあ、とふと思う。その瞬間、私は現実の本質に最も接近している実感を持ちます。現実と物語が反発するのでなく、境界線をなくして一つに溶け合った時こそ、大事な真実がよく見えてくるのです。」 また、「世界中にあふれている物語を書き写すのが自分の役割とすれば、私はもうちっぽけな自分に怯える必要はないのです。物語は既にそこにあるのですから。このように先生との出会いは大きな転機となりました。小説を書く作業が困難に満ちているのは変わりませんが、根本的な部分で「自分」の比重が軽くなり、かえって自由な視野を得たようなきがします。・・・・・・・・私は先生によって書き手として自分の位置を発見できたのです。」
  内容情報】(「BOOK」データベースより)

物語は心の薬―人生の危機に当たっても、生き延びる方法を、切実な体験を語りつつ伝える。河合隼雄氏が倒れられる直前に奇跡のように実現した、貴重な最後の対話。

【目次】(「BOOK」データベースより)

1 魂のあるところ(友情が生まれるとき/数字にみちびかれて/永遠につながる時間/子供の力/ホラ話の効能)/2 生きるとは、自分の物語をつくること(自分の物語の発見/「偶然」に気づくこと/黙っていられるかどうか/箱庭を作る/原罪と物語の誕生/多神教の日本に生まれた『源氏物語』/「死」への思い、「個」への執着/「原罪」と「原悲」/西欧一神教の人生観/厳密さと曖昧さの共存/忘れていたことが出て来る/傍にいること)

 

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プロフィール
HN:
つぶやき博士
性別:
男性
自己紹介:
何気なく本屋で手に取った本が「博士の愛した式」。以来小川作品の虜になる。小川ファンの9割は女性と思いますが、私はオトコ、しかも70才近くのおじいさんです。
みんなに嫌われる数学はわりと好きな理工系ですが、小説であれ、数学であれ、美しいモノには惹かれる今日この頃です。
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