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小川洋子さんの新刊本
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完璧な病室
価格 : 620円
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【わたしの感想文】 小川洋子デビュー作「揚羽蝶が壊れる時」と第2作目の「完璧な病室」が収められています。 『揚羽蝶が壊れる時』 まず最初に感じたことは、小川流の抑制の効いた、静謐な文体でなく、頭に浮かんだイメージがそのまま言葉となって、ほとばしっている印象を受けました。ですので、文章は分かりにくく、はっきり言って、私は文章についていけなくなる位でした。 痴呆症(今では認知症と呼ぶようになりましたが)の祖母さえを施設に預けた主人公が、実際にやってしまった現実とは別に後悔の気持ちが複雑に飛び交う心の動きが語られています。この物語では「正常と異常」が主題のように感じました。認知症で、異常な行動やしぐさの祖母に対して、心の奥底では自分が思っている正常と異常の区別が曖昧になっていることを感じる。 普通の人は無意識に正常と異常をはっきり区別しているが、小川作品ではその境界を行ったり来たりしている。このスタイルは後の作品「妊娠カレンダー」をはじめずーっと引き継がれている。読むのに疲れる作品ではありますが、まあ、小川ファン以外は読まない作品かも知れません。 『完璧な病室』 このような繊細な小説は女性にしか書けないと思いました。文章も前作「揚羽蝶が壊れる時」のように饒舌過ぎず、抑制の効いた読みやすい文章となっています。 主人公の若い主婦、弟、弟の主治医S、夫の4人が登場しますが、主人公と弟、主人公とその夫、主人公と主治医の3つの関わりが非常に対比的で面白く感じました。 弟との関係では、余命13ヶ月と宣告された弟に、静寂で完璧な環境の病室を舞台に、兄弟関係を超えたつながりが描かれています。例えば、「祈るように、何度も何度も髪を撫でた。完璧な土曜日だった。わたしたちは生活の汚れから遠く隔離されていて、誰にも邪魔されず二人きりで、とても愛し合っていて、そしてわたしの掌は快感にあふれていた。」とあります。 弟の主治医Sの関係では、日頃は決して口に出すことはない、とてつもない言葉「先生、わたしを、抱いてくれませんか」と発して行動に移します。しかし、その言動は官能的ではあるが、どこか冷めていて、冷静なのです。 夫との関係は、普通の夫婦と同じように、生活のドロドロ感や平凡な、常識的な会話など、全く日常生活そのものが描かれています。 結局、女性が誰でもが持っていると思われる日常感と非日常感を3つの典型的な対比を通して、鮮やかに示されていて、女性特有の繊細で美しい心の奥底を垣間見るこtができたように思いました。 |
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【内容情報】(「BOOK」データベースより) 弟はいつでも、この完璧な土曜日の記憶の中にいる―病に冒された弟と姉との時間を描く表題作、海燕新人文学賞受賞作「揚羽蝶が壊れる時」に、第二作品集「冷めない紅茶」を加えた四短篇。透きとおるほどに繊細な最初期の秀作。 【目次】(「BOOK」データベースより) 完璧な病室/揚羽蝶が壊れる時/冷めない紅茶/ダイヴィング・プール |
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プロフィール
HN:
つぶやき博士
性別:
男性
自己紹介:
何気なく本屋で手に取った本が「博士の愛した式」。以来小川作品の虜になる。小川ファンの9割は女性と思いますが、私はオトコ、しかも70才近くのおじいさんです。
みんなに嫌われる数学はわりと好きな理工系ですが、小説であれ、数学であれ、美しいモノには惹かれる今日この頃です。
みんなに嫌われる数学はわりと好きな理工系ですが、小説であれ、数学であれ、美しいモノには惹かれる今日この頃です。
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