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博士の本棚
価格: 500円
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【わたしの感想文】 タイトルの「博士の本棚」、「博士の愛した数式」関連のエッセイかと思いましたが、まるで違っていました。このタイトルは正直言って、2匹めのドジョウを狙った感じのタイトルで、小川さんらしくないと思います。「密やかな本棚」くらいのタイトルをつけて欲しかったと思います。 この本の中で、一番気に入っていますのは、「爪楊枝職人」と「蝿取り紙」の所です。なんでもない、普通の人は殆ど気ずかないモノを繊細で、独特な受け取り方にハットします。「爪楊枝」は”・・食後にほんのひと時役立つ以外、ほとんど使い道はなく、あっという間に捨てられてしまう、頼りなく細い、先の尖った棒。・・・この爪楊枝をただ、ひたすら、それのみに関わって、その職人芸を磨いて、彫刻芸術までに達して生涯を終える職人。 今は、家庭ですっかり見かけなくなった蝿取り紙。しかし、今でも蝿取り紙を作っている会社が岡山県倉敷にあるカモ井加工紙株式会社。無闇に殺虫剤を振り向けない食品会社などで、現役で働いているそうです。この蝿取り紙にまつわる小川さんの少女時代の思い出の記述は秀逸です。これは、単に懐古趣味の話でなく、蝿取り紙の持つ”ただ、そこに吊り下げられているだけの細長い紙。空気を汚さず、エネルギーも必要としない。究極の簡潔さで、任務を黙々とこなす謙虚さ。・・・”にあるように一種の芸術品の素晴らしさを現代に教えてくれます。 最後に、アンネ・フランクが書いた「わたしの望みは死んでからもなお生き続けること!」で語っている個所。 ”「アンネの日記」を読み返す時、この個所に差し掛かるとつい、私は、あなたの望みはかならえたたのよ、とつぶやいてしまう。あなたが足を踏み入れたこともない小さな東の国で、一人の元少女が、何度も日記を開いているのが、何よりの証拠じゃない? そう話しかけている。” |
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【内容情報】(「BOOK」データベースより) 図書室で夢中になった『秘密の花園』『小公子』、でも本が無い家だったので愛読書はなんと『家庭の医学』だった。13歳で出会った『アンネの日記』に触発されて作家を志す。オースター、ブローティガン、内田百〓(けん)、村上春樹…本への愛情がひしひしと伝わるエッセイ集。思わぬ出会いをたくさんもたらしてくれた『博士の愛した数式』誕生秘話や、愛犬の尻尾にふと白毛を見つけた感慨なども。 【目次】(「BOOK」データベースより) 1 図書室の本棚─子供の本と外国文学(図書室とコッペパン/秘密の花園・小公子・小公女 ほか)/2 博士の本棚─数式と数学の魅力(三角形の内角の和は/完全数を背負う投手 ほか)/3 ちょっと散歩へ─犬と野球と古い家(気が付けば老犬…/わずか十分の辛抱 ほか)/4 書斎の本棚─物語と小説(葬儀の日の台所/アウシュヴィッツからウィーンへ、墨色の旅 ほか) |
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夜明けの縁をさ迷う人々
価格: 1365円
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【わたしの感想文】 小川洋子さんの比較的最近の『野生時代』に掲載された短編集。小川洋子独特の魅力がいっぱいの短編集でした。 ありそうで現実にはありそうもない、風変わりな人や職業がいつものように登場し、はかなさ、消失感、残酷感、ほのぼの感、時にはユーモアと美しくも上品な不思議な世界を堪能させてくれました。 小川洋子さん独特の世界で、わたしが最も特徴的と思うのは、やはり現実と非現実との間での境界のなさと感じています。 生と死、消失と再生、わたしと他人、人間とモノ、これらをわたし達の常識では、無意識のうちにはっきり分けてききたように思います。小説の世界でも、たとえば、他人とは違う自我の強い主人公を描くやり方などが主流だったように思えます。しかし、小川作品では、この常識に、異議をとなえたり、強いメッセージを訴えるのでなく、ここは巧妙に境界線のない独特の世界を築いています。 小説スタイルは違いますが、川上弘美さんの一部の作品たとえば「蛇を踏む」とか、堀江敏幸さんの作品にも少し感じます。 短編「イービーのかなわぬ望み」では主人公の少年イービーとモノであるエレベーターとほとんど一体を感じるし、境界のなさは同化とも言えます。 短編「パラレルチョコレート」からの一節。ここでは、”生と死”について、見知らぬ老人が語る言葉に表れてきます。 ”もし、幽霊がただ、死んだ人間を表現しておるならば、それは、違う。ワシは生きておる。お嬢さんの裏側で。もちろん昔は、お嬢さんと同じ側の住人だったのだが、まあ寿命というやつでこっち側に移住してきた” 別の作品で小川さんは、どんな人でも、お金持ちだった人も、不幸だった人も、ささやかに生きた人でも、死ぬ時は小さな元素に還ると述べていらっしゃるのを思い出しました。 |
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【内容情報】(「BOOK」データベースより) もしあなたが世界からこぼれ落ちても、私が両手をのばして、受け止めよう―『博士の愛した数式』『ミーナの行進』の小川洋子が世界の片隅に灯りをともす、珠玉のナイン・ストーリーズ。 【目次】(「BOOK」データベースより) 曲芸と野球/教授宅の留守番/イービーのかなわぬ望み/お探しの物件/涙売り/パラソルチョコレート/ラ・ヴェール嬢/銀山の狩猟小屋/再試合 |
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猫を抱いて象と泳ぐ
価格: 1780円
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【わたしの感想文】 |
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【内容情報】(「BOOK」データベースより) |
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2004年から始まった本屋大賞、この大賞は他の文芸賞、文学賞選考とはかなり
違いがあるように思えます。
まず、選考委員が作家、文芸評論家でなく、本を売っている書店の店員さん
(もちろん登録された店員さんではありますが)であることです。
そして一人一人の主観で選ばれた作品ではありますが、最後は多数の人の
投票で 点数が高い作品が選ばれるしくみとなっています。よく言えば、 一見客観的、
悪くいえば人気投票です。
■ どういう本が好まれるか?
選考する人が”書き手側”でなく、”読む側”に立ちます。そして店員さんですから”売る
側”の立場になりますので、本屋大賞のキャッチフレーズ”全国書店員が選んだ
いちばん! 売りたい本”に集約されるのでしょう。
では、どんな本が選ばれるかといえば、ストーリーが面白いもの、主人公のキャラ
クターが際立つものなど,売れそうだ感じて選ばれるような傾向があるようです。
過去の大賞作品をみても、純文学系作品よりエンタテイメント系の作品が受賞・
ノミネートすることが多いことがわかります。
下の表は過去のノミネート作品の著者リストです。
ダントツの人気作家は伊坂幸太郎さんで、なんと合計8作品ノミネートされて
います。2作品以上は、東野圭吾さん、三浦しをんさん、小川洋子さん、
角田光代さん桜庭一樹さんとなっています。
■ 本屋大賞と小川洋子さん
過去ノミネートされた作品は「博士の愛した数式」 「ミーナの行進」 「猫を抱いて
象と泳ぐ」の3つでした。
作家は読者に作品を深く読まれて欲しいと願っていると思いますが、読者が少ない
よりできるだけ多くの人に読んで欲しい、売れて欲しいと本音では思っているはず
です。
小川作品の中には、ほんの少数のマニュアックに読まれる作品が多いと思うの
ですが、いくつかの作品は広く読まれる作品もあります。本屋大賞にノミネートされ
た上の3作品は後者に当てはまるでしょう。この3つの作品に共通するのは、
小川色を出しながらも、”気高く、美しく”、珍しく”ストーリー性もあり”、”ほんわかな
気持ちになれる”作品だからでしょう。エンタテイメント性があふれる作品が多い
本屋大賞の中で、異色の存在感があり、小川ファンにとっては嬉しい限りです。
伊坂 幸太郎 | アヒルと鴨のコインロッカー 重力ピエロ チルドレン 死神の精度 魔王 週末のフール ゴールデンスランバー モダンタイムス |
2004年 2004年 2005年 2006年 2006年 2007年 2008年 2009年 |
東野 圭吾 | 容疑者xの献身 新参者 流星の絆 |
2006年 2010年 2009年 |
三浦 しをん | 私が語りはじめた彼は 風が強く吹いている 神去なあなあ日常 |
2005年 2007年 2010年 |
小川 洋子 | 博士の愛した数式 ミーナの行進 猫を抱いて象と泳ぐ |
2004年 2007年 2010年 |
角田 光代 | 対岸の彼女 八日目の蝉 |
2005年 2008年 |
桜庭 一樹 | 赤朽葉家の伝説 私の男 |
2008年 2008年 |
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みんなに嫌われる数学はわりと好きな理工系ですが、小説であれ、数学であれ、美しいモノには惹かれる今日この頃です。