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小川洋子さんの新刊本
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【わたしの感想文】
「博士の愛した数式」に関連する「世にも美しい数学入門」に続く第2弾の文学と数学の接点を語る単行本である。これはエッセイでなく、小川洋子さんと3人の数学者の対談集である。文学と数学に興味ある人にとって対談が深い所まで、切り込んでおり、知的好奇心を掻き立てる優れた作品と言えると思います。
本の中には「数学ノート」、例えば、「永遠の数を求めて思索の森に」というような参考項目が書かれており、普通の人にも理解できる数学の美しさと魅惑が書かれています。ただ、これを全部理解するには高校数学程度の数学力が必要のような気がします。私は半分も理解できませんでしたが。 この対談で、私が最も良かったと思うのは、やはり、作家小川洋子がどんな気持ちで小説に取り組んでいるかが少し分かりかけたということです。 小説をどのような結末として終わるかについて小川さんは「小説は強固な輪郭を持たない、もってはいけないもの。読者のほうを小説の形で引き寄せるのでなく、どんな形の心にもしなやかに寄り添えるのが本当な小説です。ある意味、あいまいでなければいけない。」と語っています。 また、菅原邦雄教授の「小説家はどの程度読者を意識すんですか?」の質問に対して、「私の場合は、あまり、読者のためという奉仕の精神はないんです。大事なのは、読者のためという奉仕精神でなく、どんな読者の心にも寄り添えるしなやかさではないか、と思います」と語っているのが印象的です。 |
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【内容情報】(「BOOK」データベースより)
小川洋子と3人の数学者が文学と数学の接点をさぐる。 【目次】(「BOOK」データベースより)
数学を明るく書いてくれてありがとう/小説の終わりと数学の終わり/数学語は理解できない/数学の 力は偉大だ/理系と文系はあんがい似た者同士/ 小説のひらめきと数学のひらめき/数と言葉はやは りちがうもの/ストーリーを追いかける作家、証明を 追いかける数学者/“感動の表現”はこうして生まれ た/80の必然性と28の偶然性/女性数学者がん ばる/小説のモデルは/ネクタイを締めない数学者 |
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『 文 庫 版 』
著者 : 小川洋子 出版社: 中央公論新社 サイズ: 文庫 ページ数: 348p 発行年: 2009年 価格 : 720円 |
【わたしの感想文】
私達は小学生~中学生にかけて、思い出に残る出来事の一つや二つが必ずあるものです。この小説に登場する中学1年の朋子と小学6年のミーナ(本名は美奈子)が過ごした1年間の至福の時間は、読者に心地よい余韻を残してくれます。 タイトル「ミーナの行進」とは、身体が弱いミーナが、小学校へ行くのに、小さいカバ、コビトカバ(ポチ子)に乗って通学することから来ています。カバに乗って通学とはいかにも小川流の奇抜なアイデア。舞台は芦屋、小さい動物園もあった洋館の大邸宅で繰り広げられる出来事は、いかにも少女らしいウソをついたりとかで微笑ましく、大変心地良いです。 ミーナはマッチ箱を集めるのが趣味、それもマッチを擦るのでなく、マッチ箱の表紙の絵から、想像をたくましくして、物語を作る天才である。小川洋子さんの少女時代もそうだったのかと思わせます。その他、ミュンヘンオリンピックの男子バレーボール、猫田、大古、森田、南などが登場、それより面白いのが二人で考え出した空想バレーボール。決して大事件は起きないが、小さな出来事の一つ一つに無類の面白さがあります。 至福の時間の後は必ず、別れや死が訪れます。そこのところもしっかり抑えてあり、ローザおばあさん、お手伝いの米田さん、あんなに可愛がっていたカバ(ポチ子)の死が訪れる。大人になった朋子はやがて図書館の仕事、ミーナは中学卒業を待たずにスイスの学校へ、フランクフルト大学を経て、ケルンの出版エーゼントを経営している。最後の章は大人になった二人の往復書簡で終わっていて、読後はすがすがしい気持ちにさせてくれます。 この「ミーナの行進」は「博士の愛した数式」、「偶然の祝福」と同系統の作品で、残酷さや不気味さがなく、心地よく素直に読めます。ですから、深読みやかんぐりも必要なく、ただただ、素直に小川洋子の美しい世界に浸っていればよいのです。「博士の愛した数式」が好きな人にはこの「ミーナの行進」もきっと満足すること請け合いです。 |
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【内容情報】(「BOOK」データベースより
美しくて、か弱くて、本を愛したミーナ あなたとの思い出は、損なわれることがない―懐かしい時代に育まれたふたりの少女と、家族の物語。 |
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【わたしの感想文】
これぞ小川洋子の作品というべき小説。小川洋子の小説スタイルで述べた「美しさ」「毒」「透明感」「境目のない世界」「突出しない場面展開」がふんだんに盛り込まれている。その意味ではこの作品が小川洋子さんの代表作品と勝手ながら、思います。
この小川洋子流にぞっこんハマッてしまう読者もいれば、反対全く理解に苦しむ小説として二度と読まない読者とにはっきり分かれてしまうのが面白い。 指を負傷した若い女性と弟子丸という不思議な名前の標本技術者が一応主人公であるが、靴磨きのおじさん、数々の標本を依頼してくるお客が登場してきて、いつもの小川作品のように主人公が際立って目立つわけではない。 主人公の一人語りで物語が進んでいくが、標本技術者の方は実に謎に包まれていて存在感より、幻想的で透明感があふれている。浴場でのラブシーンの場面でも盛り上がることなく、実にあっさり、どこか冷めた客観的な目で描かれている。しかし、なぜか官能的である。 印象的だったのは弟子丸からプレゼントされた靴。主人公の足にぴったりで、ある日、靴磨きのおじさんに靴磨きをやってもらった時「この靴はあまりにもあなたの足にぴったりし過ぎている。このまま履き続けると足に食い込んでしまうので、精々1週間に一度くらい履くように」と言われてしまう場面である。小川流の身体とモノがつながる境目のない描写である。これに限らず、幻想と現実の区別がつかない位境界線がない。 この小説は映画化されました。監督、俳優はフランス人。小川洋子の作品が受け入れやすいのはアメリカでも、イタリアでもなく、北欧かフランスと思われる。その中でも、一番ぴったりするのは、この種の文化の香りがするフランスということになるのでしょう。 |
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【内容情報】(「BOOK」データベースより) 楽譜に書かれた音、愛鳥の骨、火傷の傷跡…。人々が思い出の品々を持ち込む「標本室」で働いているわたしは、ある日標本技術士に素敵な靴をプレゼントされた。「毎日その靴をはいてほしい。とにかくずっとだ。いいね」靴はあまりにも足にぴったりで、そしてわたしは…。奇妙な、そしてあまりにもひそやかなふたりの愛。恋愛の痛みと恍惚を透明感漂う文章で描いた珠玉の二篇。 【目次】(「BOOK」データベースより) 薬指の標本/六角形の小部屋 |
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監督:ディアーヌ・ベルトラン
マルク・バルベ
価格:3591円
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監督 ディアーヌ・ベルトラン(仏)
原題 L'annulaire(薬指) 原作 小川洋子 脚本 ディアーヌ・ベルトラン
撮影 アラン・デュプランティエ 編集 ナタリー・ラングラード 音楽 ベス・ギボンス 出演 ・少女 : オルガ・キュリレンコ(Olga Kurylenko) ・標本技術士: マルク・バルベ(Marc Barbe) |
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プロフィール
HN:
つぶやき博士
性別:
男性
自己紹介:
何気なく本屋で手に取った本が「博士の愛した式」。以来小川作品の虜になる。小川ファンの9割は女性と思いますが、私はオトコ、しかも70才近くのおじいさんです。
みんなに嫌われる数学はわりと好きな理工系ですが、小説であれ、数学であれ、美しいモノには惹かれる今日この頃です。
みんなに嫌われる数学はわりと好きな理工系ですが、小説であれ、数学であれ、美しいモノには惹かれる今日この頃です。
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